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2007/03/16

「なぜ人は宝くじを買うのだろう」

化学同人から「知のナビゲータ」というキャッチフレーズで新たに刊行された DOJIN SENSHO の第1弾。 化学同人の本には今までいろいろとお世話になってきたし、それなりに信用できると思われたので、実物を見ずに bk1で購入。

DOJIN SENSHO
 なぜ人は宝くじを買うのだろう 確率にひそむロマン
 岸野 正剛 著 bk1amazon

本書は実に1700円(税抜き)もする高価な本である。しかも、化学同人という理系専門の出版社が、満を持して(?)出版開始したシリーズの第1弾、3番バッターである。ところが、何とも期待はずれ、久々に「金返せ~!」と言いたい内容。

本書では、宝くじ、競馬、賭博、甲子園出場、株などを確率という切り口で考えてみるという中々楽しそうなテーマである。他にも、確率の誕生にまつわるパスカルとサイコロ賭博師メレとのエピソードや、神は存在するかをパスカルが確率的に考察した話など、興味深い話題を扱っているのだが、いかんせんその内容に深みがないし、中途半端なのだ。

そもそも、タイトルにもある宝くじの話では、宝くじの期待値を計算して終わり(!)で、なぜ人は宝くじを買うのかという問いの答えらしきものはどこにも書かれていない。。 競馬の話でも単純な仮定の下での単勝・複勝・連勝複式などが当たる確率を計算しただけだし。。 この辺の話題に関しては、その深みという点で「ツキの法則」で行われている考察の足元にも及ばない。

甲子園優勝の確率計算では、優勝校の勝率は0.7~0.8だろうと根拠も無く仮定した上で、甲子園で6連勝する確率はその6乗ということで2割程度と推定しているのだが、何とも深みのない議論というか、中高生向けの演習問題か? そもそも、毎年全国で必ず1校は甲子園で優勝する学校が出ているわけだから、そういう視点(ある学校が優勝する確率は単純に見て数千分の一)と、個々の学校の勝ち負けの視点(勝率約5割と仮定して優勝まで11~12連勝する確率も数千分の一)を比較して考察したりすれば、少しは面白い話になりそうなのに。

なお、数十人のグループの中で、同じ誕生日の人が存在する確率の話は、ちょっと意外な話として過去にもどこかで聞いたことがあった。23人のグループだと、同じ誕生日を持つ人が少なくとも1組存在する確率が約50%となるということは知っておいて損はないだろう。(誕生日のパラドクスと言う有名な話らしい。)

さて、この書評を書こうと思って、化学同人のサイトを見てみると、何ともショッキング(笑)なお詫びが掲載されている。。

1月20日発売のDOJIN選書「なぜ人は宝くじを買うのだろう」の内容に著者の勘違いによるミスが発覚いたしました.ご購入いただきましたお客様におかれましては,多大なご迷惑をおかけいたしましたことを深くお詫び申し上げます.改訂版の出来上がりが3月10日頃の予定でございます.すでにご購入いただきましたお客様につきましては,お取り替えをさせていただきます
どうやら「金返せ~」と言おうと思ったら、逆に「本返して~」と言われてしまった状態のようだ。。 うーむ、どこが間違いなのかぐらいどこかに書いておいてもらわないと、困るんだけど。。 わざわざ送り返して正しい本を送ってもらっても、また全部読み直すほどの本とも思えない。とはいえ、間違った内容をそのまま覚えておくのも嫌だし、今さら間違い探しをするのも面倒だし。。 正誤表を送ってもらうだけで十分なんだけど、それでは収まらないくらいの大幅変更のようだし、書店で実物を見て違いを探してみるか。。 何と言っても、間違いに気付かなかったことが一番ショックだ。。。

それにしても、DOJIN SENSHO は大丈夫だろうか? そもそも、確率の専門家でも数学者でもない人に、「確率にひそむロマン」なんてテーマの本の執筆を依頼した時点で、どこか間違えているような気がするのだが。。

もっとも、同じ DOJIN SENSHO だけど、「だまされる視覚 錯視の楽しみ方」(bk1amazon)の方は、さすがに北岡明佳の錯視のページの先生だけあって、錯視を見て楽しむだけでなく、作り方だとか、学問的な面などに触れられるという点で、たぶん買う価値はあったけのだけど。(ただし、白黒印刷であるということと、絵が全般的に小さいということが影響しているようで、錯視の迫力はウエブページには遠く及ばなかったのが残念だ。)

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発売元・販売地域などによって、以下のような分類がある。なお、発売元が記載されていないものは、販売地域内の全都道府県・政令指定都市が発売元である。サマージャンボ宝くじ(市町村振興が目的のため、政令指定都市は発売元とならない)など、一部例外がある。 [続きを読む]

受信: 2007/03/16 21:52

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先日、門倉貴史「統計数字を疑う」(光文社新書)について、2版で式が書きかえられている事例を紹介した。 他方、以前、「Do you think for the future?」 さんが、岸野正剛「なぜ人は宝くじを買うのだろう」(DOJIN選書)について紹介していて、 「なぜ人は宝くじを買うのだろう」 http://tftf-sawaki.cocolog-nifty.com/blog/2007/03/post_bc8d.html この本では回収・交換まで行われたということを思い出した。 出版社... [続きを読む]

受信: 2007/06/10 10:18

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