« 2007年3月 | トップページ | 2007年5月 »

2007/04/27

256回目の献血

前回3/30以来、28日ぶり。相模大野献血ルームにて。連休前ではあったが、いつもよりは献血している人が多かったようだ。

受け付けの際に毎度イライラさせてくれる海外旅行の詳細記入だが、今回は受付の人が予め、渡航国を書き込んでくれ、それぞれの渡航時期と宿泊日数を口頭で答えるだけで、全て向こうで書き込んでくれた。でも、海外旅行の行き先の国名は、どこから出てきたんだろう? 国名は毎回、手で書き込んでいるので、これを受付の人がコンピュータに入力しているのかもしれない。それなら、プリンタで問診用紙に印刷してくれればいいのに。。

血液検査の結果を見て血漿成分献血になったため、検査結果を出るまで刺し放しにしていた採血チューブから残りの検査用の血液を採取。今回も、右腕で検査、左腕から献血、トラブル無く順調に終了。

おみやげは、パックご飯と折りたたみ傘の二択。何とも選ぶ楽しみがないラインナップだったが、傘は以前もらっているので、今回はご飯を選択。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2007/04/25

「メディア・バイアス」

著者の松永さんの本としては、以前「食卓の安全学」を紹介しているが、松永さん自身が以前毎日新聞の記者であったという経歴を生かして、現在のマスコミによる科学報道が抱えている様々な問題点や、それに対する対応策などをバランス良く、わかりやすく書いた本。帯には「センセーショナリズム、記者の思い込み、捏造 - トンデモ科学報道を見破る!」とあり、副題の健康情報とニセ科学というキーワードを合わせると、本書がどういう立場で何を伝えようとしているかが想像できるだろう。

光文社新書 298
 メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学
 松永 和紀 著 bk1amazon

たまたま「発掘!あるある大事典2」の捏造問題が大騒ぎされたタイミングに出版されたけど、本書はもっと深いレベルでこの問題を取り扱っている。本書では、捏造自体はもちろん論外としているのだが、たとえ捏造がなかったとしても、あのような番組(何かを食べると健康に良いとか、ダイエットできるとかを安易な実験で証明したかのように伝える番組など)は、その番組コンセプトの根本部分で既に間違っていることを明確に指摘している点が高く評価できる。

あるあるの捏造問題を、他のTV局が喜んで報道したが、結局彼らには捏造レベルの問題点しか理解できていないのか、はたまた捏造レベルの問題として処理してしまいたいということが明らかとなってしまったわけだ。本書では、この手の番組に潜んでいる問題点を、単に視聴率がどうのこうのということではなく、白黒をはっきりさせる結論を欲しがる傾向、先に結論ありきの番組作り、何故かそれを補強するコメントをする研究者の存在などの点から、具体例を元に検証している。

また、そんなTVのバラエティ(教養?)番組の問題点とは別に、大手新聞社の通常の科学報道の問題点も遠慮なく指摘している。中国産野菜の残留農薬問題、マラリア対策としてのDDT使用について、PCB処理設備のリスク、環境ホルモン、化学物質過敏症、マイナスイオン、遺伝子組み換え大豆、バイオ燃料などなど多くの報道について、これもまた、具体的な報道とその裏側に潜む真実を対比させる形で検証している。これを読むとマスコミの方々はどう感じるのだろう? 反論があるのであれば、是非ともどこかに出してもらい、議論の対象としてみたいものだ。

そして、最後には科学報道を見破る十カ条として、一般読者がどのような点に気を付けて報道を受け取るべきなのかを提案している。まあ、今までもどこかで似たような教えを見た気がするが、よくまとまっているので、前半5カ条をここに掲載しておく。後半5カ条は是非本書で確認されたい。

 1.懐疑主義を貫き、多様な情報を収集して自分自身で判断する
 2.「○○を食べれば……」というような単純な情報は排除する
 3.「危険」「効く」など極端な情報は、まず警戒する
 4.その情報がだれを利するか、考える
 5.体験談、感情的な訴えには冷静に対処する

松永さんの本のすごいところは、この程度の分量の新書の中に、これだけの論点をバランスよく、しかも難しすぎず、適度な専門性を加えて、かなり正確に書こうとしているということ。また、批判すべき相手に対しては、ほぼ実名で批判を加えている点もすごい。本書にも、化学物質過敏症に関する記事を書いたことで非難されたことが出てくるが、ニセ科学やトンデモな論理は、多くのケースで被害者側の立場に立ったり、好ましく思える結論を安易に支持するものだったりするため、その論理の矛盾や科学的な根拠の問題点を指摘することは、時として一般大衆や市民団体を敵に回すことになりやすいようだ。

それでも、科学的な間違いを容認することは、最終的には自分たちの首を絞めることになるわけで、こうしてジャーナリストや科学者が勇気を持って声を上げてくれていることを尊敬すると共に、心から応援していきたい。

本書に出てくる事柄の多くはこのブログでも取り扱ったものだし、特に驚かされるものがあったわけではないのだが、その裏に潜むマスコミの問題点などの著者の考察を加えた形で本書を読み終えてみると、日本のマスコミのレベル、特に大手新聞社の抱える問題点に愕然とすると共に、先行きを思うと暗澹とした気分になってしまう。

松永さん自身が、今も毎日新聞にいたとしたら、このような視点を持ち得なかったというようなことを書いているが、要するに新聞記者というのが忙しすぎて、勉強したりじっくりと調べたりする時間がないという問題や、現実には一つ一つの記事をしっかりと調べて書くような状況にない現状というような問題があるようだ。まあ、理系白書ブログを見ていても何となくわかるけど。。

何にしても、こうして前回紹介した「水はなんにも知らないよ」に続いて、このような良書が手に入りやすくて目立ちやすい新書としてラインナップされ始めたことは歓迎したい。

ところで、松永さん自身のウエブサイトであるWAKILABは更新が滞っていたようだが、最近デザインも一新して再構築中のようで、本書の参考文献なども掲載されている。一方、とても良質のコンテンツが読めるFoodScience 松永和紀のアグリ話は有料となってしまい、気軽に読めなくなってしまったのがとても残念。毎月500円という会費は決して高くはないのだろうけど、FoodScienceの連載記事全部を読める権利は不要だが、松永さんの記事だけは読みたいという人向けに、100円/月とか、10円/記事などの選択肢もあっていいと思うけどなあ。。

| | コメント (0) | トラックバック (4)

2007/04/24

ナノ表面構造による反射防止技術

FujiSankei Business iのニュース(4/24)から。産総研と伊藤光学 ナノ微粒子で反射防止 レンズ量産技術開発

 産業技術総合研究所(産総研)のスーパーレンズテクノロジー研究チームと、レンズメーカーの伊藤光学工業(愛知県宮成町)は23日、ナノ(1ナノは10億分の1)メートルレベルの金属微粒子を使って、反射防止機能を付与したレンズを大量生産する技術を開発したと発表した。レンズや液晶パネル、自動車のメーターパネルなどに安価に光反射防止特性を付けられ、国際的に競争が激しい製品のコスト競争力がアップできるいう。

 反射防止ナノ構造は、光の波長(約300~800ナノメートル)より小さいナノサイズの構造物をレンズなどの表面に配置して、光の反射を低減させる。従来の多層膜コーティング技術よりも幅広い形状の光学部品に使えるとして期待されている。

 しかし、これまでの表面ナノ構造は、紫外線や電子線などを使って描画するリソグラフィーという半導体加工技術が使われるため、高価なことが課題だった。

 産総研と伊藤光学工業が開発した新技術は、レンズを作る際に使用する金型の表面に、マスク役となるナノ粒子を形成し、ガスなどを使ったドライエッチングで金型表面に細かい溝を付けるもの。この金型を使って射出成型することで、反射防止機能付きのレンズやパネルなどを安価に大量生産できるようになる。

射出成形によりプラスチックレンズを製造する際の金型の表面に反射防止のための凹凸を付けるための技術ということらしい。産総研のプレスリリースは、図表も豊富で説明もわかりやすい。射出成形の金型表面に微細構造のマスクとなる金属ナノ粒子を付着させた後、エッチングにより金型表面を削り取るということらしい。これにより、光の波長より微細な凹凸構造が形成され、表面での反射を防止できるとのこと。

通常の反射防止(AR)膜の原理はこちらにあるように、基材表面での反射光とコーティング表面での反射光が干渉することで反射をなくすというもの。実際には多層コーティングが広く実用化されている。一方、表面形状を凹凸として反射を防止する技術は、AG(アンチグレア)と呼ばれ、CRTや液晶ディスプレーの表面の反射防止技術として使用されている。もっとも、最近のTVやパソコンの液晶画面は光沢のあるものが多いが、これは光沢液晶とかラスタービュー液晶と呼ばれるようだ。

さて、今回の産総研の技術は、このAG処理の延長上の技術ということだろうか? このリリースによると、従来からリソグラフィーで作成する反射防止ナノ構造はあったとのこと。調べてみると、例えば大阪科学技術センターの表面無反射構造作製技術の開発というのが見つかった。こちらは、非常に規則的な制御された表面構造ができているようだが、表面の屈折率が滑らかに変化することで反射を低減するという説明がなされている。

今回の産総研の技術の場合、どんなナノ粒子をどうやって金型表面に分散させるのかとか、エッチングの条件などが不明だが、大阪科学技術センターの例に比べると、表面構造の形状や分布はランダムなものになりそうだ。どちらかというと、表面で微細な乱反射を起こすというイメージだろうか。何故かこの技術で作製したレンズ表面の電子顕微鏡写真などが載っていないのだが。。

AG処理は反射を防止する一方で透過像が不鮮明となるというのは、スリガラスのイメージで理解できそうだ。表面の凹凸を徐々に微細化していくとどうなるのかを、スリガラスを徐々に細かな研磨剤で研磨するようなイメージで捉えると、確かに透過像は徐々に鮮明になる一方で、表面での反射も徐々に増えていきそうな気もする。単に凹凸のサイズを光の波長以下にするだけで、凹凸の間隔や深さを厳密に制御しなくても、顕著な反射防止効果が得られるのだろうか?

この技術でもう一点興味があるのは、金型表面の数百ナノメートルサイズの凹凸をきちんと反映した表面が射出成形によって形成できるのだなあ、ということ。表面の微細な凹凸にきちんと樹脂が入り込むことも重要だし、金型から微細構造を維持したまま取り出せる必要もあるだろう。また、使用しているうちに金型表面が徐々に摩耗したりして、成形品の反射率が徐々に高くなってしまうなんてこともありそうだし。。 でも、確かにこの方法だとシンプルな方法で、高機能な小型レンズなどが作れそうだし、かなり面白そうな技術である。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2007/04/19

エタノールはかえって大気汚染を悪化させる?

最近、バイオエタノールがらみのニュースを多く目にするようになったのだが、アメリカでは、自動車燃料用のトウモロコシ生産が急増するとか、価格が上昇していろんな影響が出始めているとか、何だか大変な状況。そんなタイミングで、アメリカでちょっと話題になっているのが、エタノールエンジンからの排ガスはガソリンより有害ではないか? というニュース。代表して、ScienceDailyのニュース(4/18)から。Ethanol Vehicles Pose Significant Risk To Health, New Study Finds

Ethanol is widely touted as an eco-friendly, clean-burning fuel. But if every vehicle in the United States ran on fuel made primarily from ethanol instead of pure gasoline, the number of respiratory-related deaths and hospitalizations likely would increase, according to a new study by Stanford University atmospheric scientist Mark Z. Jacobson. His findings are published in the April 18 online edition of the journal Environmental Science & Technology (ES&T).
スタンフォード大学の研究によると、エタノールを主体とした燃料と純粋なガソリン燃料で、自動車排ガスによる大気汚染をシミュレーションした結果、どうやらエタノールの方が人的な被害が多くなるという結果が出たようだ。この学会のニュースはこちらで、論文はこちらで読めるようだ(論文閲覧は有料)。
Jacobson programmed the computer to run air quality simulations comparing two future scenarios:

A vehicle fleet (that is, all cars, trucks, motorcycles, etc., in the United States) fueled by gasoline, versus

A fleet powered by E85, a popular blend of 85 percent ethanol and 15 percent gasoline.

"We found that E85 vehicles reduce atmospheric levels of two carcinogens, benzene and butadiene, but increase two others - formaldehyde and acetaldehyde," Jacobson said. "As a result, cancer rates for E85 are likely to be similar to those for gasoline. However, in some parts of the country, E85 significantly increased ozone, a prime ingredient of smog."

この研究は2020年のアメリカ、特にロサンゼルスの大気汚染をコンピュータでシミュレーションするもので、全ての車(乗用車、トラック、バイクなど)が通常のガソリンで走る場合と、エタノールを85%含むE85燃料で走る場合を比較したようだ。E85の場合、発がん物質であるベンゼンとブタジエンの大気濃度は減少するものの、逆にホルムアルデヒドとアセトアルデヒドが増えるため、がんの発生には大きな違いはないという結果。むしろオゾンが大幅に増えることによる被害が大きくなるという計算のようだ。どんな計算をしたのか興味あるのだが、
"The chemicals that come out of a tailpipe are affected by a variety of factors, including chemical reactions, temperatures, sunlight, clouds, wind and precipitation," he explained. "In addition, overall health effects depend on exposure to these airborne chemicals, which varies from region to region. Ours is the first ethanol study that takes into account population distribution and the complex environmental interactions."
とあり、地形条件や気象条件なども考慮した光化学反応を組み込んで、大気中の有害物質濃度およびヒトへの暴露の程度を推定したシミュレーションのようだ。このニュースからは、ベースとなる自動車からのアルデヒドやオゾン、あるいはNOxなどの排出量をどのように推定しているのかは不明だ。

日本でも、ETBE含有のガソリンの発売が始まるようだけど、二酸化炭素の話ばかりで、排ガス中の有害物質の話がほとんど出てこないのはどうしてだろう? JARI(日本自動車研究所)の資料によると、自動車エンジンにアルコール燃料を使用した場合、空燃比が希薄側になり、NOxとアルデヒドが増加し、CO、HCが減少すると書かれている。一方、アルコール専用エンジンの場合には、CO、NOxおよびオゾンが減少するがアルデヒドは増加するとのこと。燃料が変化するのであれば、当然エンジンや触媒もそれに合わせる必要があるし、現状のエンジンで燃料だけを大幅に変えるケースを検討してもあまり意味はないのかもしれない。

この研究も、現在の技術のままで将来を予測しているような部分がありそうで、自動車側の技術の進歩で結果は大きく変わってしまうと思われる。とは言うものの、自動車燃料のバイオ化は、食料や飼料と燃料との資源の争奪戦の問題もあるし、量も量だから影響は非常に大きいわけで、過熱気味?の地球温暖化防止ブームに乗って、闇雲にエタノールに群がる動きに対し、「ちょっと待て!」と、少し冷静に考えさせる意味ではこういう発表も悪くないかもしれない。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2007/04/17

男児が減少しているという不思議

asahi.comの記事(4/17)から。日米で男児の出生率が減少 米ピッツバーグ大が統計分析

 日米両国で70年代以降、男の赤ちゃんが生まれる率が下降傾向にあることが米ピッツバーグ大などの調査でわかった。70年代の男女比を基準に試算すると、数字の上では過去の30年間に両国とも13万人前後の男児が女児になったことになるという。米国立環境衛生科学研究所の専門誌(電子版)に掲載された。

 日本の統計(1949~99年)と米国の統計(70~02年)を分析したところ、両国とも70年ごろ以降、出生1万人当たりの男児の割合が減り始め、当時と最新年を比べると、日本では出生1万人あたり37人、米国全体では同17人、米国の白人では同21人減っていた。

 新生児のうち男児の割合は、日本では99年までの30年間で51.72%から51.35%に落ちていた。もし男女比が70年代のままだったら、数字の上では12万7000人の女児が男児として生まれていたはずだったという。米国の白人では、この数字が13万5000人だった。

 この間、胎児死亡に占める男児の割合は両国とも上昇傾向にあり、日本では50年代には半数をやや超える程度だったのが、最近はざっと3分の2が男児になっている。

 男児の減少はこれまでオランダやベルギー、カナダなどでも報告されている。同大のデブラ・デービス教授は「環境中にあるなんらかの汚染物質が、男女を決める遺伝子に影響を及ぼしているかもしれない」との見方を示している。

なかなか興味深い記事である。最後の大学教授のコメントはどの程度の根拠に基づいたものなのかも知りたい所。調べてみると、昨年11月の読売新聞にも同様の記事が載っていたようで、医学処の「首都圏を中心に、男児の出生率が低下中」によると、日本の男児の出生率の低下は特に首都圏で顕著とのこと。ここでは原因は不明となっている。

元のデータを探してみたら、この研究はENVIRONMENTAL HEALTH PERSPECTIVESの4月号に掲載されていて、論文全文のPDFが無料で読める(今だけかも)。この論文によると、日本の新生児に占める男児の割合と胎児死亡に占める男児の割合の変化は、このグラフのようになる。何となく、そろそろ変化は頭打ちになったような雰囲気もある。というか、死産率はともかくも、新生児に占める男児の割合は、たまたま1970年頃が高かっただけで、元のレベルにゆっくりと戻っただけのようにも見えるけど。。

Male_birth_japan

Male_death_japan

論文の中身をきちんと見ていない段階だが、この著者は研究の当初から化学物質の影響を念頭に置いているように見える。でも、どうやら因果関係を裏付けるような具体的なデータがあるわけではなさそうだ。環境汚染の他の要因としては、親の年齢、肥満、栄養状態なども考慮する必要があるとしている。

一方、同じアメリカ人でもアフリカ系アメリカ人の場合には、逆に男児が増加傾向にある(ただし、トレンドとしては増加しているが、男性比は全体として白人と比べてかなり小さい)。元々の男女比が民族?によって異なるのも興味深いが、トレンドも逆ってことは、単純に環境汚染のせいにはできないということなのだろう。結局、出生の男女比に影響を及ぼす因子は相当多数あって複雑なので、この原因を明らかにするのはなかなか難しいのかもしれない。

ちょっと気になったのは、日本の fatal death rate(死産率のことらしい)がアメリカの2~5倍もあると書かれていること。実際の数値は 1999年で1000当たり31.6とあり、平成17年 人口動態統計の年間推計によると、2005年で出産1000当たりの死産率は29.1とあるので、確かに日本の死産率は合っているようだ。しかし、アメリカの2~5倍というのは何なのだろう? 以前日本の子どもの死亡率は最悪?というエントリで取り上げたように、日本とアメリカでデータの取り方に違いがあるのかもしれない。

なお、男児の減少についてのカナダの研究は、こちらに掲載されている。(よく見たら、同じ研究グループの論文だ。)

| | コメント (0) | トラックバック (3)

2007/04/12

金属ガラスの圧力センサー

NBonline(日経ビジネスオンライン)の記事(4/11)から。「金属ガラス」の事業化が始まった

 圧力計測機器大手の長野計器は、「金属ガラス」と呼ばれる新材料を採用した、高感度で小型の圧力センサーを実用化したと2007年4月10日に発表した。金属ガラスを用いることで、従来品に比べて感度が4倍、耐圧性が2倍に向上、またセンサー本体の直径が5ミリメートル以下に小型化できたと説明する。高感度用のセンサーにはジルコニウム(Zr)系、高耐圧用のセンサーにはニッケル(Ni)系の金属ガラスをそれぞれ適用する。
アモルファス金属については、今から四半世紀も前の学生時代に知識としては習った記憶があるのだが、ようやく実用化まで来たようだ。従来品に比べて高感度・高耐久性ということのようだが、何がポイントなのだろう? 
 金属ガラスは、従来の結晶性の金属に比べて引っ張り強さが高く、弾性率が低く、耐食性に優れるなどの特徴を持つ。さらに普通の鋳造法で金属ガラス製の部品が製造できるので、実用材料として優れている。従来の非晶質金属は1秒間に約1万度も超急冷しなければ、非晶質にならなかった。そのため厚さが薄いテープ形状にしかならず、部品として作り込むのに高度な技術が必要だった。その後、井上総長は「井上3経験則」という金属ガラスの科学・技術知識体系の基盤となる法則を公表し、実用材料化への指針を与えた。
金属ガラスの場合、まさに非晶質だから結晶粒界もなく、高強度かつ高耐食性であることは確かに理解できる特徴だ。それに昔は超高速急冷が必要と習った記憶があるが、どうやら今回の製品は特別な製法を用いずにガラス化できたということらしい。井上3経験則とは何だろう? 長野計器のニュースリリースには、冒頭の記事以上の情報はあまり見当たらない。

調べてみると、金属ガラスについては、NEDOのよくわかる!技術解説が入門編としてわかりやすそうだ。どうやら、金属ガラスという用語はアモルファス金属とは区別して使用しているようで、アモルファス金属の中でも特別な急冷が不要で、まさにガラスのように自由に加工できるものを金属ガラスというようだ。このページの中に、金属ガラスになる合金の3原則というのが載っており、これが井上3経験則らしい。

 1.組成が3元素以上の多元系であること
 2.各原子の径が12%以上異なること
 3.各元素が化合物化しやすいこと

こちらで金属ガラス開発ヒストリーに関する井上氏のインタビューが読める。何と、冷却速度が10K/秒程度でもガラス化するようだ。やはり技術の進歩というのはキチンとフォローしなくちゃ駄目だと痛感させられる。。

一方、NIMSのアモルファス合金・金属ガラスという解説によると、金属ガラスの場合にはちゃんとガラス転移点が観測されるということだから、金属ガラスという名前は学問的にも正しい用語ということになる。

既にゴルフクラブや携帯電話などに実用化されているとのことだが、このLiquidmetal Technologiesという金属ガラス専門のアメリカのベンチャーがいろいろと実用化しているようだ。この会社の新素材としては、他にも発泡金属「バブロイ」というものもあるようだ。

| | コメント (0) | トラックバック (9)

2007/04/11

熱伝導速度が金属の2倍の新素材

YOMIURI ONLINEの記事(4/10)から。熱伝導速度、金属の2倍…NECが新素材開発

 金属の2倍の速さで熱を伝えるバイオプラスチックを開発したとNECが9日、発表した。

 熱を持ちやすい携帯電話やパソコンの外装に放熱用素材として使えば、一層の小型化と廃棄物対策に役立つと期待できる。同社は2008年度以降の実用化を目指す。

 近年、電子機器は高性能化が進み、中央演算処理装置(CPU)などから出る熱が増加している。高温になると電子部品が動かなくなるため、放熱対策が小型化の課題となっている。

 とうもろこし原料のバイオプラスチック「ポリ乳酸」は土中では水と二酸化炭素に分解され、焼却しても環境への悪影響が小さい。NECはこれに、熱伝導性が高い炭素繊維を10~30%混ぜて、新素材を開発した。このプラスチックを、パソコンや携帯電話のボディーに使えば、ステンレスの1~2倍の速さで熱を伝えるため、効率的な放熱ができるという。

このニュースを見たときは、まあそんなものだろう、とあまり気にならなかったのだが、よく考えてみるとちょっと不思議なニュースだ。要するに熱伝導性の低いプラスチックに、熱伝導性の高い炭素繊維を混ぜることで、高熱伝導性のプラスチックを作ったということのようだが、それだけならば、従来からある炭素繊維強化プラスチック(CFRP)でも同じじゃないのだろうか。

例えば、こちらによると、通常のCFRPの熱伝導率は数十W/mKレベルであり、三菱電機が開発した衛星用のCFRPの熱伝導率は、何と純銅の393W/mKを上回る500W/mKとある。今回のNECのプラスチックの熱伝導率はステンレスの1~2倍程度とあるが、ステンレスの熱伝導率は15~25W/mK程度だから、このプラスチックの熱伝導率は15~50W/mK程度のようだ。やはり熱伝導率だけならば、特に珍しくないと考えて良さそうだ。まあ、ステンレスは金属の中では熱伝導率の悪い材料だしなあ。。

ということで、改めてNECのプレスリリースを読むと、どうやらバイオプラスチックで高熱伝導性を達成したことが初めてというニュースのようだ。バイオプラスチックのメリットとして、このリリースでは再生可能な植物由来であり環境調和性が高いとしか書かれていないのだが、炭素繊維を数十%添加したポリ乳酸プラスチックは再生可能なのだろうか?

もしかすると、たとえ燃やしても、元々が植物由来だからカーボンニュートラルである、というロジックなのだろうか? ポリ乳酸も最初は生分解性が重要視されていたけど、ここでは生分解性には触れられていない(炭素繊維は生分解しないだろうし)。 読売の記事でも「焼却しても環境への悪影響が小さい」なんて書いてあるけど、トウモロコシからプラスチックを作るまでのエネルギーだって馬鹿にならないし、植物由来で使い捨てよりは、再利用が容易な素材を繰り返し利用する方がトータルの環境負荷は小さいと思うけどなあ。 

ところで、プレスリリースには、「高度な熱伝導性と、金属では劣っていた平面方向への伝熱性を実現」という表現が出てくる。金属の伝熱は等方的であり、平面方向への伝熱性が劣っているというのは考えにくい。もしかすると、金属では平面方向だけに熱を伝えるということはできないが、この素材は平面方向だけが伝熱性に優れ、それとは垂直の方向には熱を伝えにくいということを主張したいのだろうか? 確かに、パソコンの底面などがあまり熱くならないようにしつつ、平面内だけで熱をヒートシンクに輸送できれば、それなりに快適だろうと思う。

でも、面と垂直な方向の熱伝導率が低い場合、どうやって熱源からこのプラスチック中の炭素繊維に熱を流すかが問題となりそうだ。プラスチックの炭素繊維層と熱源とを直接接続する金属板のようなものを使うのかもしれない。

なお、読売のニュースのタイトルに出てくる「熱伝導速度」という表現だが、普通はあまり使わない言葉じゃないだろうか? 熱伝導性が高い・低いというとき、普通は熱の伝わる速さよりは、伝わる熱量の大小を問題にするから、この表現に違和感を感じるのだろうか。(熱の移動の場合は、熱流束(単位面積を単位時間に通過する熱量)の大きさで議論する:ウィキペディア) もっとも、google検索で見ると、ac.jpドメインで「熱伝導速度」という表記が使われている例も全く無いわけではないようだ。

結局のところ、熱伝導の場合には、サイズと温度条件を揃えれば、いわゆる熱の移動速度は熱伝導率に比例するだろうから、熱伝導速度という表現でも良いのかもしれない。 一方、電気伝導の場合には、電気伝導度と電気(電位)の移動速度は全く別の話であり、たとえ低電気伝導度の素材でも電位は瞬間的に伝わるはずだ。電気の伝わる速さ

ちなみに、冒頭の4/10の読売のニュースだが、これは4/9の同じニュースを改訂したものらしい。4/9のニュースは、熱伝導、金属の2倍…バイオプラスチックをNEC開発となっており、4/10版ではわざわざタイトルの「熱伝導」を「熱伝導速度」に変えたようだ。 一方、記事の中を比較すると4/9の記事では「ステンレスの1~2倍の速度で熱を伝える」などの部分が、4/10の記事では「ステンレスの1~2倍の速さで熱を伝える」と変わっている。不思議だ。。。 (少なくとも、NECのリリース内には熱伝導速度や速さという用語は出てこないので、この辺は読売の記者のボキャブラリなのだと思われる)
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007/04/07

ココログ39か月

ココログを始めて3年と3か月が経過。1か月当たりのカウンターの伸びは17000程度と大きく減少。最近は更新が比較的多めだったのだけど。。

 1か月目:900     2か月目:4500    3か月目:11700    4か月目:19000
 5か月目:32300   6か月目:43500   7か月目:54500    8か月目:72000
 9か月目:87700   10か月目:105400  11か月目:125400  12か月目:140600
13か月目:163000  14か月目:179300  15か月目:194700  16か月目:205300
17か月目:216800  18か月目:231700  19か月目:251100  20か月目:276400
21か月目:301200  22か月目:326400  23か月目:351400  24か月目:372400
25か月目:398100  26か月目:419300  27か月目:436100  28か月目:452700
29か月目:474500  30か月目:492100  31か月目:510100  32か月目:529800
33か月目:548600  34か月目:565300  35か月目:583300  36か月目:598200
37か月目:619200  38か月目:640000  39か月目:657000

この1か月のアクセス解析結果は以下の通り。

(1)リンク元
 1位 http://www.google.co.jp 全体の26%(前回2位)
 2位 bookmark 全体の25%(前回1位)
 3位 http://www.google.com 全体の7%(前回5位)
 4位 http://tftf-sawaki.cocolog-nifty.com 全体の2%(前回6位)
 5位 http://search.goo.ne.jp 全体の1%(前回7位)
 6位 http://a.hatena.ne.jp 全体の1%(前回8位)

うーむ、検索サイトに大きな波乱が起きたようだ。今まで常にベスト3に入っていたヤフーからの検索数が激減している。Yahoo! からは、1年前には1か月に4000程度のアクセスがあったのに、この1か月は何と約60。これが、最近のアクセス数の減少の原因となっているのは間違いなさそうだ。

試しに、検索キーワードチェックツールで、下の検索キーワードランキングで上位に来ている単語を入れて確かめてみると、確かにグーグルではいずれのキーワードも上位に来るのに、ヤフーでは全く引っ掛かってこないようだ。どうやら、ヤフーの検索エンジンが大きく変わったということらしい。探してみたら、Yahoo!検索 スタッフブログに、アルゴリズムの変更についての報告があった。でも、何がどう変わったのかとか、どう順位付けしているのかなどは相変わらずさっぱりわからないままだが。。 まあ、このブログの場合には特に困るわけではないが、商売やっている人たちの中には、大変なことになっている所もあるのかもしれない。

検索エンジンと言えば、検索デスクを見ると、最近は Mooterだとか、百度 Baiduだとか、MARS FLAGだとか、SAGOOL サグールなど、新たな検索エンジンも色々とあるようだし、時にはいつもと違う検索エンジンも使ってみるのも悪くないかもしれない。

(2)検索キーワード
 1位 注射針(前回2位)
 2位 フタル酸ビス(前回10位)
 3位 桜(前回6位)
 4位 酸素水(前回3位)
 5位 失敗学(前回8位)
 6位 改造(前回9位)
 7位 開花予想(前回21位)
 8位 開花(前回23位)
 9位 コスモプラント(前回14位)
10位 ETBE(前回1位)
11位 フラーレン(前回16位)
12位 効果(前回19位)
13位 ハーモニックドライブ(前回28位)
14位 地震(前回83位)
15位 松坂(前回53位)

「フタル酸ビス」が引き続き上位に来ているところを見ると、この表記に違和感を覚えて検索する人が結構いるということだろうか? 「フタル酸ビス」って何? 環境ホルモン??のコメント欄に書いたのだが、朝日・読売・毎日の3紙のネット上のご意見募集窓口に、「フタル酸ビスという表記はおかしいですよ」という意見を送った。しかし、10日も経ったのに3紙共になしのつぶて、何の反応もない。。 新聞社の主張に対しての意見ならともかくも、こちらは単に表記の間違いを指摘しただけなので、「ご指摘ありがとうございます。今後は気を付けます。」という主旨の無難な返事が来るものと思っていたのだが。。 こちらは、きちんと住所氏名と自分の立場を明らかにして、丁寧な文章を書いたつもりだったのだけど、この対応は全くの予想外である。もう少し気長に待ってみますかね。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2007/04/06

「水はなんにも知らないよ」

最近ニセ科学批判がようやく大手マスコミにも取り上げられ始めた(例:理系白書:科学と非科学)ことは、極めて喜ばしいことである。これも、安井さん、菊池さん、天羽さん、小波さん、田崎さんや、この本の著者である左巻さんなど、一部の先生方が、必ずしも本業の実績にはならないにもかかわらず、地道に努力を続けてこられたことが、実を結び始めた結果だろうと思う。

この本は、株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワンというあまり聞いたことのない出版社が、今回新たに刊行したディスカヴァー携書というシリーズの第1巻として出版されたもの。ニセ科学批判本としては、と学会の一連の書籍があるものの、あれはトンデモを笑って楽しもうという主旨のものであり、ニセ科学を正面から科学的に批判する本は意外と少ないように思う。

本書の内容は、僕やこのブログをいつも見てくれている方にとっては、敢えて買って読むまでもない、常識的なものかもしれない。しかし、左巻さんの反ニセ科学運動への感謝と応援の気持ちと、本書がたくさん売れることが、世の中が少しでも正しい方向に進むためのきっかけとなることを願って購入した。

ディスカヴァー携書 001
 水はなんにもしらないよ
 左巻 健男 著 bk1amazon


いうまでもなく、本書のタイトルは、例の「水からの伝言」(水伝)で有名な江本氏の「水は答えを知っている」という本への反論となっているのだが、帯に「徹底検証 まん延するニセ科学にダマされるな!」と書いてあるように、内容は水伝への批判だけでなく、πウォーターを始めとした怪しい水ビジネス批判や、水と健康にまつわる正しい知識がたっぷりと詰まっている。

おちょくったタイトルであるものの、内容は実に真面目である。水の結晶化の話や、波動の話、クラスター説、活性酸素や活性水素などなど健康系の水商売で使われるキーワードに対して、一つずつ丁寧に科学的な説明をしており、大抵の怪しい水に対する批判はこの本1冊で済んでしまうだろう。

難点としては、図表があまりにも少なく文字ばかりが連綿と続くことだろうか。本書を本当に読んで欲しい読者層にとっては、退屈な理科の教科書を読むようなもので、きちんと読みこなすのが難しいのではないだろうか? amazonのカスタマーレビューも、本書を読んで初めて問題に気付いたというものよりも、待望の批判書を歓迎するといったスタンスが多いことからも、その辺の事情が窺えるような気がする。

怪しい水商売を展開する側は、ともかく単純なわかりやすいデタラメな図を使い、間違っているけどわかりやすい説明をしているわけだが、これを批判する側は、丁寧に説明しようとすればするほど、読者から敬遠されてしまうということになっているように見える。それがニセ科学批判の抱える問題点の一つかもしれないが、せめてイラストや写真を豊富に使うなどして、科学の素養のない人達への配慮があると良かったのではないだろうか。

まあ本書の場合には、タイトルがなかなかキャッチーなので、書店で手にとってもらうという第1段階はクリアしていると思うのだが、パラパラと本書をめくってみて買う気にさせるかどうかという第2段階で苦戦しそうだ。。 それでも、まずは反ニセ科学のサポーターが本書を買うことで、このあまり知られていない出版社のとてもまじめな科学啓蒙書が予想以上に売れてくれれば、今後これに続く類書が出始め、さらに相乗効果が働くことも期待できるかな?

なお、「水からの伝言」の問題点についてご存知ない方は、田崎さんの「水からの伝言」を信じないでくださいを是非とも読んで欲しい。とてもよくまとまってる素晴らしいコンテンツだと思う。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2007/04/04

遺灰とダイヤモンド

久々に、excite.ニュースの世界ビックリニュース(4/4)から。死んだ父親の遺灰をダイヤモンドにしたい娘に待った

[ベルリン 3日 ロイター] 死んだ父親の遺灰をダイヤモンドに変えようというドイツ人女性の計画は、彼女の祖母によって阻まれた。

ヴィースバーデンの地方裁判所は、この19歳の女性が、灰から人造ダイヤモンドを作成する会社のあるスイスに父親の遺灰を持って行くことを禁じた。

「故人の娘は、ダイヤモンドとなることが彼の最終的な願望だったという十分な証拠を提供することができませんでした」と、法廷は故人の86歳の母親を支持して述べた。

法廷は、残されたものをどうするかに関しては娘の意見が母親の願望に優先するが、いかなる決定も故人が表明した願望に従ったものでなければいけないと裁決した。

遺灰には天然ダイヤモンドを生成する条件を模した激しい圧力と熱が与えられる。できあがるまでに数カ月かかるそうだ。
人造ダイヤモンドは1950年代の半ばより炭素から製造されている。

このニュース自体は、ドイツの話だし、へーってところだけど、遺灰からのダイヤモンドの合成について、ちょっと気になったので調べてみた。驚いたことに、日本でも遺灰(遺骨)からダイヤモンドを作ってくれるサービスは結構あるようだ。この記事に書かれているスイスの会社と同じかもしれないのが、アルゴダンザ・キンパン 遺灰でつくるダイアモンド。ほかにも、アメリカに本社のあるライフジェムなど、いくつかあるようだ。さて、アルゴダンザの説明を読むと、
私たちのダイヤモンドは、100パーセント遺灰から抽出した炭素のみを使い製作しています。故人の生前の生活環境によって、遺灰に含まれる化学物質の組成はそれぞれわずかに異なり、ひとつひとつ微妙に違ったダイヤモンドの色味に反映されます。
とあり、遺灰に含まれている炭素のみからダイヤモンドを合成することを歌い文句としている。しかも、透明度が高く、ほとんど無色透明の、いわゆる宝石グレードの結晶が得られるようだ。お値段は、0.2カラットで約40万円。1カラットだと200万円ということで、決して安くはないようだ。で、このダイヤモンドを作るために必要な遺骨の量は、約300gと書かれている。(ライフジェム社の方も値段はほとんど一緒だが、必要な遺骨量は100~200ccと書かれている)

人工ダイヤモンドは、工具用などには実用化されていても、宝石用のようなきれいな結晶はまだ技術的に作れないのではないか、と思ったが、ウィキペディアには

近年では合成技術の向上により、透明度等が天然物と同等な品質の良い大型の人工ダイヤモンドを合成する事が技術的には可能となっているが、天然物との識別が困難な為、安価な合成物が出回るとダイヤモンド市場を暴落させ、ダイヤモンドの資産価値を無くしてしまう危惧がある。このため、ダイヤモンド・シンジケートのデ・ビアスと合成技術を持つ企業とが協定を結び、合成するダイヤモンドには不純物を入れて着色し宝石としての価値を下げている。
とある。本当かな? こちらの合成ダイヤモンドの情報によると、現在では値段はともかく、大型の宝石用ダイヤモンドも合成可能のようだ。ライフジェム社のサイトには製造工程が記載されており、遺骨から炭素を抽出し、これを原料に高温高圧でダイヤモンドを合成するという説明になっている。

それにしても、遺骨中には一体どの程度の炭素が含まれているのだろうかとか、遺骨から炭素を抽出すると、不純物も除去されるから誰の遺骨でも同じ組成のダイヤモンドができるのではないかとか、いろいろと疑問も出てくる。。 正直、本当に遺骨のみを原料にして合成しているのかどうか怪しいぞ、という気もしないではないが、もともとそんなことを考えるなら、こんな加工は頼まないだろうという気もする。。

ちなみに、カナダのメモリアルジェム社の方法は、遺骨を化学的に液体化させ、天然ダイヤモンドに融合させ高温・高圧による特別な工程にかけることで封印させるという、よくわからない説明ながらも、他の方法とは異なるものらしい。

このダイヤモンド加工が日本でどう扱われるかだが、少なくとも散骨は節度があればOKのようだし、手元供養の一種と考えれば問題ないようだ。

散骨といえば、最近、宇宙葬のニュースがあったが、これについてはHOT WIRED JAPANや、歌田明弘の「地球村の事件簿」などに詳しい。なお、月面散骨は300万円とのこと。月面に(勝手に?)骨をばら撒くのはどうかと思うけど、考えてみると、セレーネ「月に願いを!」に応募した立場としては、何も言えないかも。。

| | コメント (1) | トラックバック (1)

2007/04/02

血液型をO型に変換する酵素

YOMIURI ONLINEの記事(4/2)から。血液をO型に変える酵素、ハーバード大などが開発

 AとB、AB型の赤血球をO型の赤血球に変えることのできる酵素を米ハーバード大などの国際研究チームが開発した。

 米国の専門誌ネイチャー・バイオテクノロジー(電子版)に1日発表する。O型の血液は、どの血液型の患者にも輸血できるため、実用化すれば、輸血用血液の血液型の偏りを解消できる可能性がある。

 赤血球の表面は、毛のような糖鎖で覆われている。その糖鎖の先に結合している糖の種類によって、A、B、AB型に分かれ、何もついていないのがO型。結合している糖の種類が違うと輸血時に拒否反応が起きるため、O型以外の赤血球は輸血対象が限られる。緊急時など患者の血液型が不明な時はO型を使う。

 研究チームは、約2500種類の細菌などから、赤血球の糖鎖から糖を分断する能力を持つ酵素を複数発見。それぞれの特徴を遺伝子レベルで調べ上げ、効率を高めた酵素を開発した。この酵素でO型以外の赤血球200ミリ・リットルを1時間処理すると、ほとんどの赤血球がO型になった。

 血液に詳しい慶応大病院輸血・細胞療法部の半田誠部長の話「血液型を間違えて輸血すると致命的な副作用があり、O型の赤血球は大変に貴重。実験室段階ながら、素晴らしい成果だ。大量の赤血球を処理できれば実用化が期待できる」

ABO型の血液型は赤血球の糖鎖末端で決まるというのは、比較的よく知られた話かもしれない。具体的には、ここの模式図にあるように、糖鎖末端がL-フコースだけのものがH抗原と呼ばれるものでO型の血液となり、H抗原の末端にN-アセチルガラクトサミンが付いたものがA抗原でA型の赤血球となり、H抗原の末端にD-ガラクトースが付いたものがB抗原でB型の赤血球となる。(参考:糖鎖を構成する単糖

ということで、赤血球の血液型を相互に変換するというのは、化学的または生化学的に可能なことは容易に想像できるわけだが、問題はその選択性や収率ということになるだろう。実際、浜松医科大元教授の藤本大三郎さんの小説である、「バイオ探偵の事件簿」には、

「だからA型のこのNアセチルガラクトサミンを酵素でとってやればO型になりますよ。あるいは、B型のこのガラクトースをとってやってもO型にかわりますよ。もちろん反対にO型のものに、ガラクトースをつければB型になるし……」

「へえ。その酵素はよく知られている酵素ですか」

「どの酵素です?」

「AかBをOにかえる酵素です」

「A型をO型にかえるのは、アルファ・Nアセチルガラクトサミニダーゼ、それからB型をO型にかえるのはアルファ・ガラクトシダーゼという酵素です。もうよくわかってますよ」

「ふーん。たとえば、試薬会社から買うことができますか」

「買えると思いますよ」

というくだりがある。調べてみると、ここに出てくる、エンド-α-N-アセチルガラクトサミニダーゼも、α-ガラクトシダーゼも実際に売られているようで、確かに糖鎖の結合を切る酵素のようだ。 もっとも、同じニュースを扱っているFujiSankei Business iの記事には
 これまでに、B型からO型への転換は、ロブスタ種のコーヒー生豆から抽出した酵素を使う方法が開発され臨床試験まで進んでいる。しかし酵素を大量に必要とするため実用性が低かった。また、A型からO型への転換に成功した例はなかった。
とあり、過去にA型からO型への変換の成功例はないと書かれている。。 実用になるためには、ほぼ全量が変換する必要があるだろうから、そういう意味で書かれているのかもしれない。原理的には、O型の赤血球の糖鎖末端にN-アセチルガラクトサミンやD-ガラクトースを選択的に付加することで、A型やB型の赤血球に変換することも可能かと思うけど、選択率や収率が高いものはそう簡単には見つからないのだろう。

ところで、赤血球の血液型(抗原の型)はこのような反応で変換できるとしても、赤血球だけを輸血するわけではないだろうから、血清中に含まれる抗A抗体や抗B抗体の影響はないのだろうか? まあ、もともと緊急用で大量に輸血する場合には使わないから問題ないのかもしれないが。。 それにしても、血液型をO型に変換してまで輸血しなくてはならないような状況は、日本の場合にはどの程度あるものなのだろう? 

| | コメント (3) | トラックバック (0)

2007年3月の天気予報傾向

東京地方の過去の天気予報 のデータ更新を終了。先月から気象庁の過去の気象データ検索のページの機能が大幅に変更となったのだが、従来よりも使い勝手は悪くなったような気がする。

さて、気象庁の3月の天候にもあるように、3月は中旬が結構冷え込んだ一方で、上旬と下旬はかなり暖かく、温度変動幅が非常に大きかった。ちなみに、気象庁のサイトで1971年から2000年までの毎日の最高気温・最低気温の平年値から、各月の気温差を取り出してみると
  ----------------------------------------------------------------------------
        最高気温            最低気温
     最高  最低  変動幅    最高  最低  変動幅
  ----------------------------------------------------------------------------
  1月 10.6℃  9.3℃  1.3℃    2.9℃  1.7℃  1.2℃
  2月 11.0   9.3   1.7     3.3   1.7   1.6
  3月 15.2   11.0   4.2     7.4   3.4   4.0
  4月 21.1   15.4   5.7    13.1   7.6   5.5
  5月 24.5   21.2   3.3    17.2  13.2   4.0
  6月 26.3   24.6   1.7    20.1  17.4   2.7
  7月 31.1   26.4   4.7    24.4  20.2   4.2
  8月 31.2   30.0   1.2    24.4  23.4   1.0
  9月 29.9   24.1   5.8    23.3  18.0   5.3
  10月 23.9   19.4   4.5    17.8  12.2   5.6
  11月 19.3   14.3   5.0    12.1   6.7   5.4
  12月 14.2   10.7   3.5     6.5   3.0   3.5
  ----------------------------------------------------------------------------
となり、1年の中で気温の変動の大きいのは4月と9月頃であることがわかる。一方、今年の3月は、最高気温が24.1~9.8℃で変動幅が14.3℃、最低気温が12.6℃~2.6℃で変動幅が10.0℃と、平年値と比べてみると、いかに変動幅が大きかったがわかる。しかも、最高気温の24.1℃は5月並みだったわけだし。。

そのため、3月の気温予想は、気温相関で見ると、かなり良い成績(高い相関)を示しているように見えたのだが、気象庁が採用しているRMSE(2乗平均平方根誤差)で比べると、特に良くはなかったようだ。

結局、今年は3/16に何とか初雪が観測された一方で、とうとう最低気温が氷点下となる日がなかった。しかし、過去に氷点下となった日数を調べてみると、2006年は9日間、2005年は2日間、2004年は0、2003年は4日間、2002年は1日間、2001年は4日間ということで、氷点下にならなかったのはそれ程珍しくはないようで、むしろ昨年が異常に多かったと言えるかもしれない。

| | コメント (0) | トラックバック (2)

« 2007年3月 | トップページ | 2007年5月 »