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2007/04/02

血液型をO型に変換する酵素

YOMIURI ONLINEの記事(4/2)から。血液をO型に変える酵素、ハーバード大などが開発

 AとB、AB型の赤血球をO型の赤血球に変えることのできる酵素を米ハーバード大などの国際研究チームが開発した。

 米国の専門誌ネイチャー・バイオテクノロジー(電子版)に1日発表する。O型の血液は、どの血液型の患者にも輸血できるため、実用化すれば、輸血用血液の血液型の偏りを解消できる可能性がある。

 赤血球の表面は、毛のような糖鎖で覆われている。その糖鎖の先に結合している糖の種類によって、A、B、AB型に分かれ、何もついていないのがO型。結合している糖の種類が違うと輸血時に拒否反応が起きるため、O型以外の赤血球は輸血対象が限られる。緊急時など患者の血液型が不明な時はO型を使う。

 研究チームは、約2500種類の細菌などから、赤血球の糖鎖から糖を分断する能力を持つ酵素を複数発見。それぞれの特徴を遺伝子レベルで調べ上げ、効率を高めた酵素を開発した。この酵素でO型以外の赤血球200ミリ・リットルを1時間処理すると、ほとんどの赤血球がO型になった。

 血液に詳しい慶応大病院輸血・細胞療法部の半田誠部長の話「血液型を間違えて輸血すると致命的な副作用があり、O型の赤血球は大変に貴重。実験室段階ながら、素晴らしい成果だ。大量の赤血球を処理できれば実用化が期待できる」

ABO型の血液型は赤血球の糖鎖末端で決まるというのは、比較的よく知られた話かもしれない。具体的には、ここの模式図にあるように、糖鎖末端がL-フコースだけのものがH抗原と呼ばれるものでO型の血液となり、H抗原の末端にN-アセチルガラクトサミンが付いたものがA抗原でA型の赤血球となり、H抗原の末端にD-ガラクトースが付いたものがB抗原でB型の赤血球となる。(参考:糖鎖を構成する単糖

ということで、赤血球の血液型を相互に変換するというのは、化学的または生化学的に可能なことは容易に想像できるわけだが、問題はその選択性や収率ということになるだろう。実際、浜松医科大元教授の藤本大三郎さんの小説である、「バイオ探偵の事件簿」には、

「だからA型のこのNアセチルガラクトサミンを酵素でとってやればO型になりますよ。あるいは、B型のこのガラクトースをとってやってもO型にかわりますよ。もちろん反対にO型のものに、ガラクトースをつければB型になるし……」

「へえ。その酵素はよく知られている酵素ですか」

「どの酵素です?」

「AかBをOにかえる酵素です」

「A型をO型にかえるのは、アルファ・Nアセチルガラクトサミニダーゼ、それからB型をO型にかえるのはアルファ・ガラクトシダーゼという酵素です。もうよくわかってますよ」

「ふーん。たとえば、試薬会社から買うことができますか」

「買えると思いますよ」

というくだりがある。調べてみると、ここに出てくる、エンド-α-N-アセチルガラクトサミニダーゼも、α-ガラクトシダーゼも実際に売られているようで、確かに糖鎖の結合を切る酵素のようだ。 もっとも、同じニュースを扱っているFujiSankei Business iの記事には
 これまでに、B型からO型への転換は、ロブスタ種のコーヒー生豆から抽出した酵素を使う方法が開発され臨床試験まで進んでいる。しかし酵素を大量に必要とするため実用性が低かった。また、A型からO型への転換に成功した例はなかった。
とあり、過去にA型からO型への変換の成功例はないと書かれている。。 実用になるためには、ほぼ全量が変換する必要があるだろうから、そういう意味で書かれているのかもしれない。原理的には、O型の赤血球の糖鎖末端にN-アセチルガラクトサミンやD-ガラクトースを選択的に付加することで、A型やB型の赤血球に変換することも可能かと思うけど、選択率や収率が高いものはそう簡単には見つからないのだろう。

ところで、赤血球の血液型(抗原の型)はこのような反応で変換できるとしても、赤血球だけを輸血するわけではないだろうから、血清中に含まれる抗A抗体や抗B抗体の影響はないのだろうか? まあ、もともと緊急用で大量に輸血する場合には使わないから問題ないのかもしれないが。。 それにしても、血液型をO型に変換してまで輸血しなくてはならないような状況は、日本の場合にはどの程度あるものなのだろう? 

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コメント

超緊急時にはO型の血液を輸血せよということになっていますが、そこまでせっぱつまったことはないです。抗A抗体や抗B抗体を考えると、O型の血液より、酵素処理したAB型の血液のほうがいいのでしょうかねえ。

投稿: NATROM | 2007/04/04 21:59

なるほど、そこまでは気付きませんでした。釈迦に説法で恐縮ですが、福井医科大学輸血部のQAによると、実際の輸血用には血漿成分をほとんど取り除いたものを使うようですから、抗A抗体、抗B抗体のことは考えなくてもよいのでしょう。

他にも実用化のためには、輸血に使用する血液中からこの酵素を取り除く必要がありそうですが、恐らく同様に、赤血球だけを取り出して輸血用血液製剤とすることで、これらの問題を解決するのではないでしょうか。

news@nature.comのニュースによると、アメリカの事情も色々ありそうです。(献血者の低下傾向、人種的な血液型分布の特性、血液型不適合による事故のリスクなど)

今回の新しい酵素は、コーヒー豆から得られる従来のB型→O型の酵素に比べて効率が1000倍程度良いとのこと。さすがにアメリカ、手回しが良くて、既にこの技術は ZymeQuest という会社が実用化中で、臨床段階にあるようです。

投稿: tf2 | 2007/04/04 22:38

じゃあ、B型の人はアルファガラクトシダーゼを

摂取すれば、O型になるんですか?

投稿: ft2 | 2012/08/29 22:50

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