金属ガラスの圧力センサー
NBonline(日経ビジネスオンライン)の記事(4/11)から。「金属ガラス」の事業化が始まった
圧力計測機器大手の長野計器は、「金属ガラス」と呼ばれる新材料を採用した、高感度で小型の圧力センサーを実用化したと2007年4月10日に発表した。金属ガラスを用いることで、従来品に比べて感度が4倍、耐圧性が2倍に向上、またセンサー本体の直径が5ミリメートル以下に小型化できたと説明する。高感度用のセンサーにはジルコニウム(Zr)系、高耐圧用のセンサーにはニッケル(Ni)系の金属ガラスをそれぞれ適用する。アモルファス金属については、今から四半世紀も前の学生時代に知識としては習った記憶があるのだが、ようやく実用化まで来たようだ。従来品に比べて高感度・高耐久性ということのようだが、何がポイントなのだろう?
金属ガラスは、従来の結晶性の金属に比べて引っ張り強さが高く、弾性率が低く、耐食性に優れるなどの特徴を持つ。さらに普通の鋳造法で金属ガラス製の部品が製造できるので、実用材料として優れている。従来の非晶質金属は1秒間に約1万度も超急冷しなければ、非晶質にならなかった。そのため厚さが薄いテープ形状にしかならず、部品として作り込むのに高度な技術が必要だった。その後、井上総長は「井上3経験則」という金属ガラスの科学・技術知識体系の基盤となる法則を公表し、実用材料化への指針を与えた。金属ガラスの場合、まさに非晶質だから結晶粒界もなく、高強度かつ高耐食性であることは確かに理解できる特徴だ。それに昔は超高速急冷が必要と習った記憶があるが、どうやら今回の製品は特別な製法を用いずにガラス化できたということらしい。井上3経験則とは何だろう? 長野計器のニュースリリースには、冒頭の記事以上の情報はあまり見当たらない。
調べてみると、金属ガラスについては、NEDOのよくわかる!技術解説が入門編としてわかりやすそうだ。どうやら、金属ガラスという用語はアモルファス金属とは区別して使用しているようで、アモルファス金属の中でも特別な急冷が不要で、まさにガラスのように自由に加工できるものを金属ガラスというようだ。このページの中に、金属ガラスになる合金の3原則というのが載っており、これが井上3経験則らしい。
1.組成が3元素以上の多元系であること
2.各原子の径が12%以上異なること
3.各元素が化合物化しやすいこと
こちらで金属ガラス開発ヒストリーに関する井上氏のインタビューが読める。何と、冷却速度が10K/秒程度でもガラス化するようだ。やはり技術の進歩というのはキチンとフォローしなくちゃ駄目だと痛感させられる。。
一方、NIMSのアモルファス合金・金属ガラスという解説によると、金属ガラスの場合にはちゃんとガラス転移点が観測されるということだから、金属ガラスという名前は学問的にも正しい用語ということになる。
既にゴルフクラブや携帯電話などに実用化されているとのことだが、このLiquidmetal Technologiesという金属ガラス専門のアメリカのベンチャーがいろいろと実用化しているようだ。この会社の新素材としては、他にも発泡金属「バブロイ」というものもあるようだ。
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