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2007/04/06

「水はなんにも知らないよ」

最近ニセ科学批判がようやく大手マスコミにも取り上げられ始めた(例:理系白書:科学と非科学)ことは、極めて喜ばしいことである。これも、安井さん、菊池さん、天羽さん、小波さん、田崎さんや、この本の著者である左巻さんなど、一部の先生方が、必ずしも本業の実績にはならないにもかかわらず、地道に努力を続けてこられたことが、実を結び始めた結果だろうと思う。

この本は、株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワンというあまり聞いたことのない出版社が、今回新たに刊行したディスカヴァー携書というシリーズの第1巻として出版されたもの。ニセ科学批判本としては、と学会の一連の書籍があるものの、あれはトンデモを笑って楽しもうという主旨のものであり、ニセ科学を正面から科学的に批判する本は意外と少ないように思う。

本書の内容は、僕やこのブログをいつも見てくれている方にとっては、敢えて買って読むまでもない、常識的なものかもしれない。しかし、左巻さんの反ニセ科学運動への感謝と応援の気持ちと、本書がたくさん売れることが、世の中が少しでも正しい方向に進むためのきっかけとなることを願って購入した。

ディスカヴァー携書 001
 水はなんにもしらないよ
 左巻 健男 著 bk1amazon


いうまでもなく、本書のタイトルは、例の「水からの伝言」(水伝)で有名な江本氏の「水は答えを知っている」という本への反論となっているのだが、帯に「徹底検証 まん延するニセ科学にダマされるな!」と書いてあるように、内容は水伝への批判だけでなく、πウォーターを始めとした怪しい水ビジネス批判や、水と健康にまつわる正しい知識がたっぷりと詰まっている。

おちょくったタイトルであるものの、内容は実に真面目である。水の結晶化の話や、波動の話、クラスター説、活性酸素や活性水素などなど健康系の水商売で使われるキーワードに対して、一つずつ丁寧に科学的な説明をしており、大抵の怪しい水に対する批判はこの本1冊で済んでしまうだろう。

難点としては、図表があまりにも少なく文字ばかりが連綿と続くことだろうか。本書を本当に読んで欲しい読者層にとっては、退屈な理科の教科書を読むようなもので、きちんと読みこなすのが難しいのではないだろうか? amazonのカスタマーレビューも、本書を読んで初めて問題に気付いたというものよりも、待望の批判書を歓迎するといったスタンスが多いことからも、その辺の事情が窺えるような気がする。

怪しい水商売を展開する側は、ともかく単純なわかりやすいデタラメな図を使い、間違っているけどわかりやすい説明をしているわけだが、これを批判する側は、丁寧に説明しようとすればするほど、読者から敬遠されてしまうということになっているように見える。それがニセ科学批判の抱える問題点の一つかもしれないが、せめてイラストや写真を豊富に使うなどして、科学の素養のない人達への配慮があると良かったのではないだろうか。

まあ本書の場合には、タイトルがなかなかキャッチーなので、書店で手にとってもらうという第1段階はクリアしていると思うのだが、パラパラと本書をめくってみて買う気にさせるかどうかという第2段階で苦戦しそうだ。。 それでも、まずは反ニセ科学のサポーターが本書を買うことで、このあまり知られていない出版社のとてもまじめな科学啓蒙書が予想以上に売れてくれれば、今後これに続く類書が出始め、さらに相乗効果が働くことも期待できるかな?

なお、「水からの伝言」の問題点についてご存知ない方は、田崎さんの「水からの伝言」を信じないでくださいを是非とも読んで欲しい。とてもよくまとまってる素晴らしいコンテンツだと思う。

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コメント

脳内構造に関する、一風変わったトンデモ科学のホームページがあるのですが、よろしければ、ご批評願えないでしょうか?

投稿: ノース | 2007/07/08 15:04

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