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2007/05/22

イノベーション25とバイオブタノール

化学工業日報 The Chemical Daily News で見つけたニュース(5/22)から。総合科学技術会議、技術革新戦略ロードマップ公表

 総合科学技術会議は、イノベーション25中間とりまとめを受けて、イノベーション創出に向け、社会還元を加速するプロジェクト、分野別の戦略的な研究開発の推進、基礎研究の3層構造で形成した技術革新戦略ロードマップをとりまとめ公表した。このなかで、社会還元を加速するプロジェクトの一環として、「食料・飼料と競合しないバイオマス資源の総合利活用」を推進することによって、リグニンからの高機能樹脂、ナノセルロースファイバー、バイオエタノールを上回る高オクタン価ガソリン添加基材のバイオブタノールなどの技術開発を推進する。また、これらをベースにしたナフサ、エタンガスに代替する汎用樹脂原料のエチレンやプロピレンの供給多様化を視野に入れていく。
イノベーション25というキーワードは最近になって時々ニュースなどで聞く言葉。内閣府のサイトにも、イノベーション25のページがある。安倍政権が打ち出した政策の目玉の一つで、今から18年後の2025年までの技術革新計画といったもののようだ。どんな技術革新をイメージしているのかは、イラストで見る20のイノベーション代表例がわかりやすい。がん・心筋梗塞・脳卒中の克服とか、同時翻訳装置とか、空気をきれいにする自動車だとか、ある程度可能性のありそうなものからロボットによる月旅行なんてテーマまで並んでいる。

さて、今回のニュースはそのイノベーション25の中間とりまとめをベースにより具体的な開発テーマを発表したというものの中から化学系のテーマを抜き出して書いたもののようだ。総合科学技術会議のサイトに、この記事の元となった資料が載っている。総合科学技術会議(第67回)議事次第を見ると、資料1-2の(3)の4ページ目からが「食料・飼料と競合しないバイオマス資源の総合利活用」となっており、バイオマスを原料とした化石燃料代替燃料開発となっている。

これによると、「バイオマス資材の調達」では、未利用バイオマス資源の大量収集、低コスト集荷輸送技術の開発、ゲノム研究の成果等を応用した高バイオマス資源作物の作出・生産、が開発が必要な技術として上げられている。未利用バイオマス資源としては、森林資源、資源作物、有機系廃棄物など、食料・飼料と競合しないバイオマスと書かれているが、具体的な数量などは特に書かれていない。そんなに十分な量があるのだろうか?

「バイオ燃料化技術」では、分解、糖化、発酵システムの効率化により、バイオマス燃料の高効率量産技術を開発するとある。具体的には新規発酵菌や酵素の作出によりC5、C6糖の同時発酵技術、糖化-発酵の一段処理技術、セルロース系資源の分解・糖化・発酵技術の開発や、エタノールの高吸湿性等の欠点を解消するための、より燃焼効率が高いブタノール等の生産技術の開発を含むとある。

また、「材料製造技術」では、バイオアルコールからの汎用化成品の製造、リグニンを利用した高機能ポリマーの生産、セルロースを利用したセルロースナノファイバの調製およびこれを活用したバイオナノファイバコンポジット(BNFC)、高性能フィルム等の生産技術の開発があげられている。

ロードマップとしては、5年以内に要素技術を開発し、5年目に燃料生産の実証プラントの構築といった計画が書かれている。2025年には例えばバイオナノファイバコンポジットで補強されたバイオマス由来の材料でできたボディーで構成され、バイオ燃料で走行する自動車の開発を目指すとある。

うーむ、2025年にはまだバイオ燃料で走る通常の内燃エンジンを想定しているんだ。。 なんとなく他のテーマ(燃料電池自動車など)と整合性が取れていないような気もするけど、こちらの方が現実的な線かもしれない。 ただ何というか、無理やり何にでもバイオマスを導入しようとしているような印象もあるのだが、結局のところ、現在未利用のバイオマスがどれだけあって、そこからどれだけ効率的に樹脂や燃料を合成できるか? という部分に掛かっていると言って良いだろう。

ところで、ここに出てくるバイオブタノールだが、ウィキペディアにも出ているように、昨年BPとデュポンが発酵によるバイオブタノール生産技術の開発について発表を行っている。

 早期の市場への導入のため、初期のバイオブタノールの生産は、既存の技術で行います。第二段階では、新しいバイオテクノロジー・プロセスを使ってより高収率な生産の研究開発に着手しています。この生産には色々な種類の原料、例えば、サトウキビやビート、トウモロコシ、小麦、キャッサバなどを使用するつもりですが、将来的には、成長の早いイネ科作物や、麦わら、トウモロコシの茎といった「農作物副産物」のセルロース系原料の使用も視野に入れています。バイオブタノールの製造工程はエタノールと類似しており、使用する原料も同様であることから、既存のエタノール生産設備を改造すればバイオブタノールを生産することができます。
とあるが、何となく糖やセルロースはC5とかC6の化合物であり、これを原料にC4化合物を生産するのって、効率悪そうに思うのはバイオを知らない人の思い込みなのだろうか? 調べてみると、アセトン・ブタノール発酵というのはかなり古くから知られた発酵技術で、こういうのをベースに遺伝子組換えなどにより効率を高めるということかもしれない。

ところで、ブタノールといえば、1-ブタノール2-ブタノールなど、結構強烈な臭いがするし、それなりに有害性があるようだけど大丈夫だろうか? まあ、発がん性はないようだし、有機溶剤としての使用上の注意という点ではガソリンと同等ということで良いのかな。

一方、高濃度アルコール燃料のエンジン等への影響は、国土交通省の報告書によると、アルミニウムやゴムへの腐食が懸念されるものとなっており、どうやら既存のエンジンでは残念ながらブタノール100%燃料は使用できないようだ。まあ、ブラジル等でエタノール対応の車が走っているから、これについてはそれほど難しい話ではないだろうとは思うけど。

さて、将来の本命のバイオ燃料はブタノールになるのだろうか?

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