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2007/05/29

総合的に味覚を数値化できる味覚センサー

SciencePortalのニュース(5/29)から。耐久性のある味覚センサー実現

高性能で耐久性に富む味覚センサーが、科学技術振興機構の委託事業で実現した。

九州大学大学院システム情報科学研究院の都甲潔教授らの研究成果を基に科学技術振興機構が、株式会社インテリジェントセンサーテクノロジーに企業化開発を委託していた。 食品メーカーなどの商品開発現場で威力を発揮すると期待されている。

味覚は、機械的に測定する(デジタル化)ことが難しいとされていたが、都甲教授らは、食べ物の味物質が舌の脂質膜に吸着されると膜の内側と外側で電位差が生じることを利用し、人工脂質膜を用いて人間の舌と同様の電位差を生じさせ、これを測定によって、味覚をデジタル化(数値化)することを可能にした。

現在、人手に頼っている食品メーカーの商品開発現場の味覚検査などに使うためには、苦味・渋味・酸味・うま味・塩味という5つの味覚を同時に測定することや、数多くの検査によっても性能が劣化しない耐久性の向上が求められていた。

委託事業の結果、味覚センサーに使われる膜の材料を改良して耐久性を向上し、さらに、センサーの組み合わせを考慮して使用する物質を最適なものにすることで、従来より耐久性を10倍以上高め、検査に要する時間も短縮させることに成功した。

実用レベルの味覚センサーが開発されたようだ。これは、人間の舌が味を感知しているのと同様の仕組みを人工的な脂質膜で作り上げたセンサーのようで、苦味、渋味、酸味、うま味、塩味という5つの味覚を同時に測定できるという優れもののようだ。科学技術振興機構(JST)のプレスリリースによると、
 人間の舌は主に5つの味(甘味、酸味、塩味、うま味、苦味)を感じ、その情報は神経を伝わって脳に届き識別されます。さらに、辛さや渋味、コクや香り、温度、色などさまざまな要因が影響し合って、総合的な「味覚」を感じるようになっています。その味覚をデジタル化(数値化)するセンサが求められていました。
とあり、よくよく比べてみると、今回のセンサーが測定できるという5つの味覚と、人間の舌の5つの味覚が異なっているんだけど。。 リリースによると、今回のセンサーは「甘味」を感じることができない代わりに「渋味」を感じられるということになるのだが、甘味を感じ取れないとすると、総合的な味覚評価という観点ではちょっと大丈夫だろうか?  甘味に関しては、光を用いた糖度センサー(参考:近赤外分光法による果実糖度の測定)というのが実用化されているけど、これが測定している糖度は必ずしも甘味とイコールではないようだ。(コメント欄参照)

ウィキペディアによると、国際的にも甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5つが基本味として認められているとのこと。それぞれの味によって人の味覚感度特性はかなり異なるようで、今回のセンサもその辺の調整に苦労していそうだ。
 
株式会社インテリジェントセンサーテクノロジーには、人の味覚感知の仕組みや、この味覚センサーの構造などについてわかりやすい説明が載っている。センサープローブそのものは、特定の味覚を検知可能な脂質膜を取り付けたpH電極みたいなもののようだ。それぞれの味覚を感知するセンサープローブを複数同時に試料溶液に浸漬し、各電極の出力をソフトウェアで処理することにより、総合的に味覚としてデジタル化するという仕組みのようだ。

ところで、九州大学の都甲研究室の味覚センサとはなどの説明を読むと、味覚の総合的な評価は、甘味、酸味、塩味、旨味、苦味の5つの軸で評価しているようで、今回のセンサでも甘味を感知できないとは考えにくい。 やっぱりプレスリリースの誤りだろうか? 

従来のセンサの場合、まず標的となる分子などを明確化し、その標的の存在に応答するようなものを作ってきたと思われるのだが、今回のセンサでは、酸味や苦味などそれぞれの味覚の元となる物質とか分子などは特に明確化されていない。それにも関わらず、複数の生体類似センサの出力を組合せることで、対象を明確化することなく、結果として総合的に人間の味覚を表現可能な出力が得られる点が興味深い。この研究室では、同じようなアプローチによる匂いセンサの開発も行っていて、これもかなり面白そうだ。

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2007/05/25

薬指と人差し指の長さ比が数学や国語の成績と関係する?

Live Scienceのニュース(5/22)から。Finger Length Predicts SAT Performance

A quick look at the lengths of children's index and ring fingers can be used to predict how well students will perform on SATs, new research claims.

Kids with longer ring fingers compared to index fingers are likely to have higher math scores than literacy or verbal scores on the college entrance exam, while children with the reverse finger-length ratio are likely to have higher reading and writing, or verbal, scores versus math scores.

指の長さと子どもの成績に相関があるという話。薬指が人差し指よりも長い子は、大学入試の数学の成績が国語?の成績よりも高い傾向がり、人差し指が薬指よりも長い子は逆の傾向があるとのこと。
Scientists have known that different levels of the hormones testosterone and estrogen in the womb account for the different finger lengths, which are a reflection of areas of the brain that are more highly developed than others, said psychologist Mark Brosnan of the University of Bath, who led the study.

Exposure to testosterone in the womb is said to promote development of areas of the brain often associated with spatial and mathematical skills, he said. That hormone makes the ring finger longer. Estrogen exposure does the same for areas of the brain associated with verbal ability and tends to lengthen the index finger relative to the ring finger.

母親の子宮内にいる時期に浴びるテストステロン(男性ホルモン)とエストロゲン(女性ホルモン)の量が薬指と人差し指の長さに影響することは知られていて、それと同時に脳のどの領域が発達するかにも影響するということから、両者に相関が現れるようだ。この結果、テストステロンを多く浴びた場合、空間的な能力や数学的な能力に関連する脳の領域がより発達すると同時に、薬指が長くなる傾向が出てくるようだ。一方、エストロゲンを多く浴びた場合には、言語的な能力に関連した脳の領域が発達し、人差し指が長くなる傾向があるということだ。

この研究は、SAT(the College Board Scholastic Assessment Test)というイギリスの全国テストの成績と、受験者の手のひらの写真から読み取った指の長さのデータを解析したもの。その結果、予想通りにかなり明確な相関が得られたようだ。また、薬指と人差し指の長さの比率と、数学と国語の成績の差との相関も良好だとのこと。極端に言えば、理科系に向いているか、文科系に向いているかは、生まれる前に決まっている部分が結構大きそうだという話であり、そんなに明確な傾向が見られるの? という点でちょっとショックな結果である。

実はこの話、以前の左利き女性は乳がんのリスクが倍?というエントリでも出てくる話なのだが、今回の新たなデータでも同じ説が裏付けられたということで、かなり信憑性の高い話と言えそうだ。

もっとも、同じニュースを伝えるカナダのNATIONAL POSTの記事によると、この研究は6~7才の男女合わせて75人を対象としたものとのことで、実際のデータを見ないと何とも言えないが、かなり人数が少なめなのが気になるところだ。なお、この記事では、子どもの指の長さを見て適性を早めに判断するというよりは、例えば薬指の短い子に数学を教える時には、グラフや図を使った説明よりは、文章による説明を増やした方が理解しやすいだろうというようなアドバイスもしている。

改めて検索してみると、働くオンナの味方 基本的な性格は薬指でわかるなんてのもあって、この傾向をコミュニケーションに役立てようという提案がされている。。 まあ、ほとんどあてにならない血液型性格判断より少しはましかもしれないが、話のきっかけとしてならともかくも、相手の性格を事前に決め付けるのは結構危険だと思うけど。。

なお、今回の研究結果は、British Journal of Psychologyに掲載されるとのこと。

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2007/05/22

イノベーション25とバイオブタノール

化学工業日報 The Chemical Daily News で見つけたニュース(5/22)から。総合科学技術会議、技術革新戦略ロードマップ公表

 総合科学技術会議は、イノベーション25中間とりまとめを受けて、イノベーション創出に向け、社会還元を加速するプロジェクト、分野別の戦略的な研究開発の推進、基礎研究の3層構造で形成した技術革新戦略ロードマップをとりまとめ公表した。このなかで、社会還元を加速するプロジェクトの一環として、「食料・飼料と競合しないバイオマス資源の総合利活用」を推進することによって、リグニンからの高機能樹脂、ナノセルロースファイバー、バイオエタノールを上回る高オクタン価ガソリン添加基材のバイオブタノールなどの技術開発を推進する。また、これらをベースにしたナフサ、エタンガスに代替する汎用樹脂原料のエチレンやプロピレンの供給多様化を視野に入れていく。
イノベーション25というキーワードは最近になって時々ニュースなどで聞く言葉。内閣府のサイトにも、イノベーション25のページがある。安倍政権が打ち出した政策の目玉の一つで、今から18年後の2025年までの技術革新計画といったもののようだ。どんな技術革新をイメージしているのかは、イラストで見る20のイノベーション代表例がわかりやすい。がん・心筋梗塞・脳卒中の克服とか、同時翻訳装置とか、空気をきれいにする自動車だとか、ある程度可能性のありそうなものからロボットによる月旅行なんてテーマまで並んでいる。

さて、今回のニュースはそのイノベーション25の中間とりまとめをベースにより具体的な開発テーマを発表したというものの中から化学系のテーマを抜き出して書いたもののようだ。総合科学技術会議のサイトに、この記事の元となった資料が載っている。総合科学技術会議(第67回)議事次第を見ると、資料1-2の(3)の4ページ目からが「食料・飼料と競合しないバイオマス資源の総合利活用」となっており、バイオマスを原料とした化石燃料代替燃料開発となっている。

これによると、「バイオマス資材の調達」では、未利用バイオマス資源の大量収集、低コスト集荷輸送技術の開発、ゲノム研究の成果等を応用した高バイオマス資源作物の作出・生産、が開発が必要な技術として上げられている。未利用バイオマス資源としては、森林資源、資源作物、有機系廃棄物など、食料・飼料と競合しないバイオマスと書かれているが、具体的な数量などは特に書かれていない。そんなに十分な量があるのだろうか?

「バイオ燃料化技術」では、分解、糖化、発酵システムの効率化により、バイオマス燃料の高効率量産技術を開発するとある。具体的には新規発酵菌や酵素の作出によりC5、C6糖の同時発酵技術、糖化-発酵の一段処理技術、セルロース系資源の分解・糖化・発酵技術の開発や、エタノールの高吸湿性等の欠点を解消するための、より燃焼効率が高いブタノール等の生産技術の開発を含むとある。

また、「材料製造技術」では、バイオアルコールからの汎用化成品の製造、リグニンを利用した高機能ポリマーの生産、セルロースを利用したセルロースナノファイバの調製およびこれを活用したバイオナノファイバコンポジット(BNFC)、高性能フィルム等の生産技術の開発があげられている。

ロードマップとしては、5年以内に要素技術を開発し、5年目に燃料生産の実証プラントの構築といった計画が書かれている。2025年には例えばバイオナノファイバコンポジットで補強されたバイオマス由来の材料でできたボディーで構成され、バイオ燃料で走行する自動車の開発を目指すとある。

うーむ、2025年にはまだバイオ燃料で走る通常の内燃エンジンを想定しているんだ。。 なんとなく他のテーマ(燃料電池自動車など)と整合性が取れていないような気もするけど、こちらの方が現実的な線かもしれない。 ただ何というか、無理やり何にでもバイオマスを導入しようとしているような印象もあるのだが、結局のところ、現在未利用のバイオマスがどれだけあって、そこからどれだけ効率的に樹脂や燃料を合成できるか? という部分に掛かっていると言って良いだろう。

ところで、ここに出てくるバイオブタノールだが、ウィキペディアにも出ているように、昨年BPとデュポンが発酵によるバイオブタノール生産技術の開発について発表を行っている。

 早期の市場への導入のため、初期のバイオブタノールの生産は、既存の技術で行います。第二段階では、新しいバイオテクノロジー・プロセスを使ってより高収率な生産の研究開発に着手しています。この生産には色々な種類の原料、例えば、サトウキビやビート、トウモロコシ、小麦、キャッサバなどを使用するつもりですが、将来的には、成長の早いイネ科作物や、麦わら、トウモロコシの茎といった「農作物副産物」のセルロース系原料の使用も視野に入れています。バイオブタノールの製造工程はエタノールと類似しており、使用する原料も同様であることから、既存のエタノール生産設備を改造すればバイオブタノールを生産することができます。
とあるが、何となく糖やセルロースはC5とかC6の化合物であり、これを原料にC4化合物を生産するのって、効率悪そうに思うのはバイオを知らない人の思い込みなのだろうか? 調べてみると、アセトン・ブタノール発酵というのはかなり古くから知られた発酵技術で、こういうのをベースに遺伝子組換えなどにより効率を高めるということかもしれない。

ところで、ブタノールといえば、1-ブタノール2-ブタノールなど、結構強烈な臭いがするし、それなりに有害性があるようだけど大丈夫だろうか? まあ、発がん性はないようだし、有機溶剤としての使用上の注意という点ではガソリンと同等ということで良いのかな。

一方、高濃度アルコール燃料のエンジン等への影響は、国土交通省の報告書によると、アルミニウムやゴムへの腐食が懸念されるものとなっており、どうやら既存のエンジンでは残念ながらブタノール100%燃料は使用できないようだ。まあ、ブラジル等でエタノール対応の車が走っているから、これについてはそれほど難しい話ではないだろうとは思うけど。

さて、将来の本命のバイオ燃料はブタノールになるのだろうか?

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2007/05/16

トレッドミルデスク

最近、更新が滞りがちだが、どうもピンと来るネタと出会わないためなので、ご心配なく。ということで、今日は軽い話題。The Cleveland Leader のニュース(5/15)から。Lose Weight on the Jobによると、

If you're like most of us working folks, you're chained to your desk and computer all day, and by the time you get home you're in no mood to head up to the gym for a workout. Sound familiar? Such a sedentary lifestyle can pack on the pounds, slowly but surely. So what's a working stiff to do?

Well now a couple clever doctors have come up with a solution, albeit a bizarre one. These doctors believe that walking while you work might be the key to weight loss, and have designed a "vertical workstation" treadmill that allows you to exercise on a treadmill without losing valuable time away from the desk.

ということで、一日中机の前に座って、コンピュータを相手に仕事をし続けているようなオフィスワーカーの運動不足の悩みを解決してくれる、画期的なデスクが開発されたというニュース。

まあ何はともあれ、この記事に掲載されている写真を見れば一目瞭然だが、要するにトレッドミル(ランニングマシン)とコンピュータデスクを一体化したというだけ。これでも、アメリカのMayo Clinicの医師が開発したものらしく、必ずしも冗談ではなく、本気らしい。。 何しろ、この成果がBritish Journal of Sports Medicineという雑誌に掲載されるらしいし。トレッドミルの速度は時速1マイルとのことだから、かなりゆっくりとした動きのようだが、それでもこんな状態で仕事ができるのだろうか? 一応、パソコンのモニターとキーボードやマウスの他に、書類やペンを置くスペースも用意してあるし、花を飾ることもできるとのことだが。

実際に15人の被験者に、このトレッドミルデスクを使用して仕事をしてもらう実験を行った結果、エネルギー消費量は通常の3倍に増加し、しかも仕事の効率には変化がなかったとのことだが、本当だろうか? こんな体勢で歩きながら仕事をしたら、間違いなくエネルギー消費は増えるだろうけど、仕事にならないような気もするんだけど、慣れなのだろうか? だいたい、歩きながらコンピュータのモニタを見ると、細かな文字は読めなくなりそうなものだが。。

Stuff.co.nzによると、肥満の人が、1日2~3時間このトレッドミルデスクで仕事をすることで、年間20~30kgの減量が期待できるということ。このトレッドミルデスクの値段は約 1600US$ ということで、意外と安いかもしれない。仕事とエクササイズを同時にやってしまおうという、何とも乱暴なアイデアのようにも思えるのだが、果たして売れるだろうか?

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2007/05/11

「ヒューマンエラーを防ぐ知恵」

化学同人が最近刊行し始めたDOJIN選書だが、前に紹介した「なぜ人は宝くじを買うのだろう」が、内容が中途半端で何だかなぁってだけでなく、著者の勘違い?で発売早々に大幅改訂されるというトホホな本だった。それに懲りずに、タイトルに惹かれて本書を買ったのだが、帯には「事故への道を知り、事故を避ける。すぐに役立つ、ヒューマンエラー防止のノウハウ。」とあり、実に実践的な内容のようだ。まえがきには、

本書は、安全に携わる人びとの役に立つことを第一の目標とし、ヒューマンエラーによる事故を防ぐ方法を提供することに力点を置いています。本のテーマとしてヒューマンエラーを選ぶと、それだけを論じる形となり、事故を防ぐための方法論は閑却してしまいがちです。もちろん、学術的にはヒューマンエラーの正体について考察を深めることも有意義でしょう。しかし、「ヒューマンエラーの真相はよくわからないが、こうすれば防げる」というノウハウの方が必要なのではないでしょうか。また、ノウハウを現場で適用するためのコツを示して、読者がすぐに実践できるよう配慮しました。
とあり、いわゆる実用的で役に立つ本を目指したもののようだ。

DOJIN SENSHO 4
 ヒューマンエラーを防ぐ知恵  ミスはなくなるか
 中田 亨 著 bk1amazon

本書は、
    第1章 ヒューマンエラーとは何か
    第2章 なぜ事故は起こるのか
    第3章 ヒューマンエラー解決法
    第4章 事故が起こる前に……ヒューマンエラー防止法
    第5章 実践 ヒューマンエラー防止活動
    第6章 あなただったらどう考えますか
    第7章 学びとヒューマンエラー

という章立てで、前半はヒューマンエラーとはどんなもので、どんな状況で、どのように起こるのかといったことを実例を交えながら解説し、後半で数多くの事例についての具体的な対策を一緒に考えるような構成となっている。

著者は産総研のデジタルヒューマン研究センターの研究員ということだが、「ヒューマンエラー研究家」という看板を持っているとのことで、かなり広い分野の多くの例を実際に見聞きして、その対策を考えてこられたようだ。ということで、本書はそれほど系統だっているわけではないのだが、とてもバラエティに富んだ事例がたくさん登場してくるので、かなり面白い。

企業などで実際に安全関係の仕事に関わった経験のある人は多いと思うのだが、どうしても自分の属する業界の、その中でも非常に狭い領域の安全のことだけに特化している傾向があるのではなかろうか? 本書には、一つひとつはさほど高度なノウハウでもないように思えるのだが、自分の良く知らない他の業界の事例がたくさん出てくるためなのか、ちょっと新鮮な物の見方や、少し意外な解決法が見つかったりする。

ということで、確かに著者の狙い通り、とても実践的で、実務者にとって参考になる本だろうと思う。もちろん、仕事上では安全とは直接関係のない方でも、本書を読むと普段の仕事などに参考になる点もあると思うし、単なる頭の体操として捉えても結構面白い発見があるのではないだろうか。

面白かった例をひとつだけ紹介する。これは、医師が書いたメモが悪筆だったため、部下の看護師がこれを読めず、しかも気が弱かったので医師に確認することができず、勘に頼って行動したために機器の操作を間違ったという事例。本書で紹介されている対策例の中で意外だったのが、上司の間違いを正す体験や、部下に間違いを正される体験をする模擬演習を行うというもの。

どうだろう? 僕も今まで会社などで実にさまざまな研修を受けてきたけど、こういう研修や演習は経験がない。この研修はヒューマンエラー対策だけでなく、職場などでのコミュニケーションを活性化したり、部下が言いたいことが言えずにフラストレーションが溜まってしまうような環境を変えたり、といった目的にも役立ちそうだ。何よりも、部下からの指摘をまともに受け止めることのできない上司が、こんな研修を通じて少しでも変わってくれるとすると、これは多くの人にとって非常に魅力的ではないだろうか?

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2007/05/09

天井の高さが思考に与える影響

Yahoo! News 経由の LiveScience.com のニュース(5/7)から。Ceiling Height Alters How You Think

A recent study at the University of Minnesota suggests that ceiling height affects problem-solving skills and behavior by priming concepts that encourage certain kinds of brain processing.

"Priming means a concept gets activated in a person's head," researcher Joan Meyers-Levy told LiveScience. "When people are in a room with a high ceiling, they activate the idea of freedom. In a low-ceilinged room, they activate more constrained, confined concepts.

The concept of freedom promotes information processing that encourages greater variation in the kinds of thoughts one has, said Meyers-Levy, professor of marketing at the University of Minnesota. The concept of confinement promotes more detail-oriented processing.
"

天井の高さが思考形態に影響を与えるという研究の話。この記事では具体的にどのような研究内容なのかあまり明らかではないのだが、社会調査のようなものではなく、脳科学と関連した研究で、いわゆる「発火」を調べたもののようだ。天井が高い部屋だと自由度の高いアイデアが活性化され、天井の低い部屋ではより制限されたコンセプトが活性化されるということらしい。

しかし、天井が高い方が良いという話ではなく、自由度の高いコンセプトは変化の大きな種類の思考に向いていて、制限されたコンセプトというのは詳細な処理などに向いているということのようだ。要するに、その場所で期待される思考の形態に応じて、天井が高いほうが良い場合と低い場合が良い場合があるということらしい。

The study consisted of three tests ranging from anagram puzzles to product evaluation. In every tested situation a 10-foot ceiling correlated with subject activity that the researchers interpreted as "freer, more abstract thinking," whereas subjects in an 8-foot room were more likely to focus on specifics.
天井が高いというのが10フィート(約3メートル)、天井が低いというのは8フィート(約2.4メートル)ということで、一般的なオフィスの天井と家庭の天井程度の違いだろうか? だとすると、感覚的には、この程度の天井の高さの違いによって脳の活性化部位にまで明確な差が出るものなのかという疑問もあるのだが、そんなものなのだろうか? 
Meyers-Levy and Zhu will publish their results this August in the Journal of Consumer Research. But Meyers-Levy thinks her study has wide-reaching applications outside the marketplace.

"Managers should want noticeably higher ceilings for thinking of bold initiatives. The technicians and accountants might want low ceilings."

具体的には、例えば管理者は幅広い思考を要求されるので高い天井が必要で、技術部門や会計部門には低い天井が向いているという話が述べられているのだが、騙されたと思って、部署毎に天井の高さを変えてみると面白いかもしれない。 もっとも、この研究は実はまだ論文にはなっていないようで、今年の8月に発表される予定とのこと。。 

ということで、まあそんな研究もあるよという紹介なのだが、天井の高さがあまりに低かったり高かったりすると、それなりに心理的な影響はありそうだ。例えば、学校の教室の天井の高さは建築基準法で決まっているようだが、ehouse 住まいをめぐる日常と冒険の旅には学校の天井の高さの影響について調べた結果が載っている。天井が高すぎると集中力がなくなり、低すぎると圧迫感があるということらしい。そう考えると、今回の研究結果と従来からの知見は良く一致すると言えるのかもしれない。

天井の高さと脳機能の関係について調べてみようと思ったら、脳機能をアップさせる風水という変なページが引っ掛かった。。

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2007/05/08

今度は明治製菓が白金入りガム

日本経済新聞 5/8の朝刊の消費面、消費最前線の記事から。

プラチナ配合のガム

明治製菓(0120・041082)のガム「キシリッシュガムプラチナミント」

医薬品などにも使われるプラチナ(白金)を配合したガム。白ワインの原料になるぶどう「シャルドネ」の風味をベースに、ミント味を効かせた。歯の主成分であるハイドロキシアパタイト、口臭抑制効果のあるローズマリーも含む。

金色の包装で高級感を出した。キシリッシュシリーズ発売10周年を記念した商品。《120円。15日》

ということで、2年半ほど前にナノコロイド白金入りガムというエントリーを書いたのだが、今度は大手の明治製菓が、白金入りのガムを出すようだ。これってどういう効果を狙ったものなのだろう? プラチナは医薬品にも使われるからといって、無闇に配合していいものなのか? 逆に医薬品に使われるものだからこそ、食品に添加する場合にはきちんとした管理が必要だろうと思うのだが。。

明治製菓のプレスリリースにも、白金の効果や、白金の添加量などの情報は何も記載されていない。通常のキシリッシュガムの小売価格が105円らしいので、やや高めに設定されているようだが、その価格差が白金のせいかどうかはわからない。 1粒が10円で、目標販売額が290億円ということは、29億粒の販売を考えているわけだ。過去に取り上げたナノコロイド白金入りガムの白金含有量が 1粒当たり 0.8マイクログラムとのことなので、例えばこれと同じ量の白金を含むと仮定すると、29億粒で 2.3kgの白金を消費するということになる。

それにしても、アプト株式会社のようなベンチャー企業が白金をうたい文句にガムを売っても、失礼ながら知名度の点でも販売力の点でも大したことはないだろうが、明治製菓のような大手の一流企業が同じことをすると、その影響力は桁違いとなるだろう。。

明治製菓の今回のガムの場合、白金のミラクルな効果などは一切打ち出さず、単に高級なイメージだけを利用しているようだから、むしろ金粉入りのお酒などに類似した商品なのかもしれない。しかし、IASO GUMの華々しい?効果や、最近TVの宣伝などで良く見るDHC プラチナシルバーシリーズなどの健康イメージに便乗したのではないか?と勘繰りたくもなる。

この手のプラチナブームは、どうやら活性酸素をやっつけてくれる抗酸化作用が目玉のようだけど、抗酸化作用を持つといわれている成分ならビタミンCを始めとして色々あるわけだから、敢えて白金じゃなくても良いと思うし、白金を貴重な工業原料であるレアメタルとして捉えると、たとえ少量といえども、あだやおろそかに食品や化粧品として使い捨てるべきではないと思うのだが。。

たまたま同じ5/8の日本経済新聞の商品面(27面)には、「激化するレアメタル争奪」という記事が載っており、この中に

レアメタルと総称される金属類は、その名の通り生産量が少なく、生産国も偏在している一方、情報技術産業などの需要が拡大している。「産業のビタミン」がかつてのキャッチフレーズだったが、いまや重要度がさらに増し「産業の必須アミノ酸」。投資対象としても目を向けられるようになった。
などと書かれており、日本のレアメタル消費動向が表になっている。これによると、白金の場合、2005年の日本の消費量は41トンで世界に占める割合が19.6%となっている。自動車や家電用などの燃料電池には、電極触媒として白金は欠かせない原料であり、今の技術だと到底足りないなんて議論(参考:元素戦略)もされている。

白金の資源としての現状については、日本金地金流通協会のPLATINUM 最新データや、金・プラチナ Q&Aが参考になる。世界の埋蔵量が約16,000トンに対し、現在年間生産量が約 200トンであり、今後の増加を見込むと今後数十年で使い切るという予想のようだ。 

価格も、以前はグラム 2,000円程度と覚えていたのに、今や何と 5,000円/g 程度と非常に高騰している。

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2007/05/07

ココログ40か月

ココログを始めて3年と4か月が経過。1か月当たりのカウンターの伸びは16000程度。ゴールデンウィークを含む期間としては、まあまあ順調なアクセス状況だったと言えそうだ。

 1か月目:900     2か月目:4500    3か月目:11700    4か月目:19000
 5か月目:32300   6か月目:43500   7か月目:54500    8か月目:72000
 9か月目:87700   10か月目:105400  11か月目:125400  12か月目:140600
13か月目:163000  14か月目:179300  15か月目:194700  16か月目:205300
17か月目:216800  18か月目:231700  19か月目:251100  20か月目:276400
21か月目:301200  22か月目:326400  23か月目:351400  24か月目:372400
25か月目:398100  26か月目:419300  27か月目:436100  28か月目:452700
29か月目:474500  30か月目:492100  31か月目:510100  32か月目:529800
33か月目:548600  34か月目:565300  35か月目:583300  36か月目:598200
37か月目:619200  38か月目:640000  39か月目:657000  40か月目:673500

この1か月のアクセス解析結果は以下の通り。

(1)リンク元
 1位 http://www.google.co.jp 全体の29%(前回1位)
 2位 bookmark 全体の21%(前回2位)
 3位 http://www.google.com 全体の7%(前回3位)
 4位 http://tftf-sawaki.cocolog-nifty.com 全体の2%(前回4位)
 5位 http://jword.search.biglobe.ne.jp 全体の1%(前回10位以下)
 6位 http://search.goo.ne.jp 全体の1%(前回5位)

先月に続き、Yahoo!サーチからのアクセスは激減したまま復活のきざしなし。代りに?上位に進出してきたのが、何故かBIGLOBEサーチ


(2)検索キーワード
 1位 ETBE(前回10位)
 2位 ETBE(前回27位)
 3位 乳酸(前回18位)
 4位 酸素水(前回4位)
 5位 注射針(前回1位)
 6位 改造(前回6位)
 7位 自転車(前回)
 8位 効果(前回12位)
 9位 失敗学(前回5位)
10位 etbe(前回圏外)
11位 レスベラトロール(前回52位)
12位 ハーモニックドライブ(前回13位)
13位 コスモプラント(前回9位)
14位 松坂(前回15位)
15位 フラーレン(前回11位)

4月の末に日本で初めてのバイオガソリンが発売になったということがニュースとなったため、このバイオガソリンに含まれている成分のETBEとは何ものだ?ということで検索された模様。一方、先月上位にいくつか入っていた桜の開花に関するキーワードはさすがに50位以下に落ちてしまった。

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2007/05/02

2007年4月の天気予報傾向

東京地方の過去の天気予報 のデータ更新を終了。

さて、気象庁の4月の天候には、全国的に4月は降水量が少なかったと書かれているが、東京地方で 1mm以上の降水があった日は実に14日もあり、月の半分近くの日で雨が降ったということで、結構雨が多かった印象もあるのだが。。 ちなみに、昨年の月ごとの 1mm以上の降水観測日は、

 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
  3   6   8  10  13   8  13   8   9   11   7    7

となっており、14日というのは結構多いということがわかる。

なお、4月の天気予報の精度という点では、最高気温の予想において、実績値と予想値の差の平均が、前日予報だけが大きくプラス側に振れたのが特徴的。実際、トレンドで見ると、特に月の前半で、週間予報が最高気温を高めに予想していたのに、前日予報では何故か大幅に低めに修正したのが、結果として裏目に出たようだ。

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