自尊心とIAT(潜在的連合テスト)
asahi.comの記事(6/15)から。日本人の自尊心、米国人並み 東大などが潜在意識調査
東京大や大阪大、ハーバード大など日米の国際研究チームが、日本人も米国人と同じくらい自尊心が強いことを、特別な心理テストを使って初めて科学的に証明した。チームは「『日本人は卑屈だ』といった偏見の解消に役立つのではないか」としている。米心理科学協会の専門誌サイコロジカル・サイエンス6月号に発表した。自尊心というのをどのように定義し、定量化するのか? という部分が明確であるならばいいのだが、この記事を読む限りは、その辺が全く不明。というか、広く合意が得られるような「自尊心」の定量方法などがあるのだろうか? その意味では、最後の山口教授のコメントもすごい。「科学的に証明できた」と断言しているようだが、IATによって「自尊心」が正しく評価できるということは、どうやって科学的に証明されているのだろう?従来の自己報告式の心理テストでは、米国人は自尊心が強く、日本人は弱いという結果が出やすい。ただ、日本では謙遜(けんそん)が美徳とされ、米国では自己主張するのが当然とする風潮があり、被験者が本心とは違う回答をしている可能性がある。
今回、東京大の山口勧(すすむ)教授(社会心理学)らは、本人も自覚できない潜在的な態度を調べられるIATと呼ばれるテストを使った。パソコン画面上に次々に現れる「私」「我々」「すばらしい」「ひどい」といった単語を関連づけてもらい、その反応速度をもとに自分と他人への潜在的な態度を判定した。
日本と米国、中国の7大学の学生500人ほどを対象にIATを実施。自己報告式テストで米国、中国、日本の順に強さに差がついていた自尊心が、IATでは3カ国とも同程度であることを確かめた。
山口教授は「日本人は自尊心が弱いとか、日本では自尊心が重要でないという『日本人特殊論』が、いまだに海外にある。実際にはそうでないことが科学的に証明できたので、偏見がなくなるのではないか」と話している。
IATテストを調べてみると、IATテストというサイトで、実際にいくつかのIATテストを体験できる。IATは "Implicit Association Test" の略で、日本語でいうと「潜在的連合テスト」というらしい。今まで、色々な心理テストやら適性検査のようなものを受けた経験があるが、このテストの経験はまだない。どうやら1995年以降の研究論文で脚光を浴びた比較的新しいテストのようだ。
試しに、「ジェンダー・IAT」を受けてみた結果、男性と科学、女性と人文学に中程度の選好があるという答えが出た。うーむむ。。 (Firefoxではテスト開始画面まで進んだのに、実際のテストには進めなかったので、IEで再挑戦する必要があった。)
このテスト、文章で説明するより体験してみるのが一番早いと思うが、画面中央に表示される単語が、右側のカテゴリーに属するのか、それとも左側のカテゴリーに属するのかを、できるだけ素早く判断し、仕分けるテストを多数繰り返すものである。
何度かカテゴリー分けをやっているうちに、段々慣れてくるのだが、途中でカテゴリー分けが左右逆になったりするので、意外と難しい。というか、前半で慣れされておいて、後半それを逆にするということは、どうしても後半の仕分けでミスが出やすいような気もするのだが、本当にこれで潜在的な意識を正しく評価していると言えるのだろうか? このテストの場合、男性と科学、女性と人文学の組合せを最初に行い、後半で男性と人文学、女性と科学の組合せを行うため、どうしても後半でミスが出たり時間が掛かったりしそうな気がする。
ちなみに自尊心についてのIATはここでは受けることができないのだが、どんなカテゴリーがあるのかは、こちらのレポートが参考になるかもしれない。やっぱり、自分と快、他人と不快の組合せを最初にテストするようだから、どうしてもそちらの傾向が強く出るのではないのか?
このテストの妥当性については、よくある質問の最後に掲載されている論文を読む必要がありそうだが、IATテストの位置付けや、テストの設計や結果の解釈の仕方については、例えばこの論文などに詳しく書かれている。これを(斜め読み)してみると、テストの順番の影響についても評価した結果、大きな影響はないという結論となったようだ。
試しに、今度は老人と若者についてのテストを体験してみたら、老人と若者に対する自動的な選好がほとんど無いという結果が得られたのだが、確かに順番の影響がなかったのか、それとも2回目のIATテストだったので慣れの影響があったのか? 何とも微妙な印象だ。。。
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