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2007/07/19

琵琶湖の溶存酸素濃度を電気分解で上昇させる

日経Ecolomyで見つけたニュース(7/18)から。(7/18)深層の酸素不足を解消――琵琶湖、水を電気分解

 琵琶湖の深い場所の水が酸素不足の状態であるのを解決しようと、水を電気分解して酸素を作り水に溶け込ませる実験を、滋賀県琵琶湖環境科学研究センターと信州大などが18日、琵琶湖南部で始めた。

 電気分解でできた水素はエネルギーとして利用する“一石二鳥”の計画だ。

 同センターの熊谷道夫研究情報統括員らは、水深3―4メートルの湖底でしゅんせつのために開けられた深さ約10メートルのくぼ地に水槽を沈めて実験。湖上の船に設置した太陽電池で発生した電力を使い、水槽の中に取り付けた電極に電気を流した。

 すると水槽内の水の酸素濃度は、1リットル当たり0.4ミリグラムから1時間半後に約6ミリグラムに上昇した。熊谷さんは「生物が生きるには十分な濃度だ。今回は水素を取り出さないが、今後水素の使い方を検討し、生態系への影響を調査したい」と話している。

 琵琶湖では、冬に表層の水が冷やされて底に沈み、深い場所に酸素が供給されると考えられていたが、最近は深い場所が酸素不足になっており、地球温暖化の影響とみられる。

太陽電池で発電した電力を使って、琵琶湖の水を直接電気分解し、発生した酸素で溶存酸素を増やしてやろうということらしい。何だか、アイデア段階で既に無理がありそうな気もしないではないが、まあ動き出したら自然エネルギーだけで琵琶湖が浄化され、しかも水素を取り出せるから、良いことずくめということらしい。うーむ。

滋賀県琵琶湖環境科学研究センターでは、残念ながらこの画期的?な実験のことは見つけられなかったのだが、basswave-newsによると、この計画は2004年から進めているものらしく、生態系への悪影響のことも考慮しながら、地道に進めてきているようだ。

今回の実験では、溶存酸素量が6mg/Lまで上昇したとのことだが、純水の最大溶存酸素濃度は、ここによると、20℃、1気圧で8.84mg/Lとのことだから、過飽和までにはなっていないようだ。ところで、同時に生成する水素はどうしたんだろう? 琵琶湖の中に酸素水水素水の領域を同時に作って、魚や植物への影響を調べるというのも面白そうだけど。。

ところで、通常、純水の場合にはそのまま電気分解はできないので、何らかの電解質を加えるわけだが、そのため電気分解によって酸素ガスと水素ガス以外にも、酸やアルカリが副生するのだが、今回の場合どうしているんだろう? もしかして、琵琶湖の水はいろんな不純物が溶けていて、特に電解質を加えなくても電解できるかもしれないが、それにしても、何らかの副生する酸やアルカリがあるはずだが。。 (もしかして陰極側と陽極側を混ぜればOK?)

一方、太陽電池で発電した電力で水を電気分解して水素を作るという技術の効率を調べていたら、2007年のセンター試験問題の理科総合Aにどんぴしゃりの問題が載っていた。これによると、0.25gの水の電気分解に必要な電力が1Whとのこと。

例えば、シャープの住宅用太陽電池の場合、1165×900mmで約160Wの発電能力だから、これ一枚で、1時間に最大40gの水を電気分解できて、発生する酸素は標準状態で25リットル程度。25リットルというと、何となく結構な量にも思えるが、この大きさのパネルを使っても、たった40gの水しか分解できないわけだ。

一方、こんな水槽用のエアーポンプを使うと、消費電力30Wで最大30L/min程度の送風能力とのことだから、5台並べると、1時間に9000リットルの空気が送り込めることになり、酸素換算でも1900リットル程度となる。これは、電気分解の場合の75倍だ。。 まあ、深い湖底まで送り込もうとすると、このポンプでは無理かもしれないけど、それでも相当な量となりそうだ。

琵琶湖の溶存酸素量を増やすのに、何も純酸素が必要なわけでなく空気でもいいのだから、わざわざ水を電気分解して酸素を作って、それを湖水に溶存させるってのはどうみても効率が悪そうだ。。 正当な比較のためには、実際に空気を送り込んだ場合に、どの程度の溶存酸素濃度まで上昇するかの試験も必要だけど、副生する水素(上の例で言えば、標準状態で約50リットル)の有効活用を見込んだとしても、果たしてどうなるだろうか?

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コメント

>まあ、深い湖底まで送り込もうとすると、このポンプでは無理かも

底層水(中層でもいい)を、一旦くみ上げ、水面近くのパイプ内でポンプを使って空気を混ぜ込んで、その水を底層に戻せば、汎用の空気ポンプを流用できるんじゃないでしょうか?

電気分解では、電気抵抗で水温が上がってしまい、せっかく酸素を含んだ水が上昇してしまうような予感がします。電極の面積を工夫するのでしょうが。

投稿: 通りすがり | 2007/07/22 11:49

なるほど。 でもよくよく考えてみると、そもそも底層の酸欠状態が生まれたのは、湖水の循環が止まったせいと考えられているんだから、最初から酸素を吹き込むような対策よりも湖水の循環を助けるような対策を採用する方が良いのではないか? なんて気もしてきますね。。 たとえば太陽電池で発電した電気とポンプを使って、底層水を表層に汲み上げてやるだけでも何らかの効果がありそうな気もしますね。

電気分解に伴う発熱も確かに気になりますね。

投稿: tf2 | 2007/07/22 14:20

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