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2007/08/29

身体活動量とは

昨日に続いて今日もFujiSankei Business iのニュース(8/29)から。メタボに商機!松下電工、まず身体活動量計を11月に

 松下電工は、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)を防ぐビジネスに参入する。保健指導者など専門家向けの身体活動量計「アクティマーカー」を11月に、来年4月にはその解析ソフトを売り出す。

(中略)

 アクティマーカーは、日常生活での身体の活動量を12秒ごとに計測し、1分ごとの平均値を0・1METs(メッツ=身体活動の強さを安静時の何倍に相当するかで表す)単位で記録する仕組み。結果をソフトで解析、国の運動指針に対応した身体活動量を客観的に評価することで、生活習慣の改善指導に役立てる。

METs(メッツ)という単位で測定可能な身体活動量という量があるらしい。どんなものなんだろう? 松下電工のニュースリリースによると、このアクティマーカーという身体活動量計は、3軸の加速度センサによって、上下・左右・前後の加速度を計測するもので、これによって装着した人の身体活動をモニターできるらしい。

METs(メッツ)というのは、運動の強度を表す単位のようだが、これに活動時間を掛けたものが身体活動量で、単位はEX(エクササイズ)というらしい。このMETsとかEXとかいう単位は、どうやら厚生労働省の健康づくりのための運動指針2006が根拠となっているようだ。この指針によると、1EX(=1METs×1hour)の身体活動量に相当するエネルギー消費量は、個人の体重によって異なり、消費量(kcal)= 1.05 × 身体活動量(EX)× 体重(kg)という簡易換算式で計算できるとのこと。

ちなみに、この身体活動量にMETsとかEXという単位を使用している理由として、同じ運動を行っても体重が異なるとエネルギー消費量が異なることから、体重に関係のない身体活動量を示すためとのこと。この活動指針には健康を維持するための運動のしかたについて随分と詳細な解説が載っている。なお、EX はともかくも、METs という単位名の由来が書かれていないのだが、いったい何の略なのだろう?

この運動指針は結構膨大で、全部読むのは大変なので、そのエッセンスを探してみたら、横浜市旭区のメタボリックシンドロームがわかりやすい。この計算表に毎日の運動や生活活動を入力して計算すれば、身体活動量が求められるというわけだ。とはいうものの、日常生活でのすべての活動量を正確に把握するのはほとんど無理のような気がする。。

というわけで、松下の開発した身体活動量計は、確かにこの厚生労働省の運動指針に沿って健康維持を行おうとする場合にはかなり便利な装置と言えそうだ。とはいえ、腰に付けた加速度センサで身体全体の運動量をどの程度の精度で把握できるのだろう? 腰を静止したままでもいろいろと首や手や足先の運動などもできそうだし、同じ加速度でも負荷が異なる場合(バーベルの重さが違うとか)などもありそうだし、どうなのかな?

なお、この METs とか EX という単位だが、ざっと検索した結果、ほとんど厚生労働省の指針を根拠にしているようだ。てっきり厚生労働省が作ったものかと思ったが、New Jersey Medical Schoolのサイトなどでも使用されていることがわかった。これによると、METs は Metabolic Equivalent Tasks の略で、世界的に通用する単位のようだ。でも、このページでも、運動量は MET-hours という単位で表されており、もしかしたら EX の方は厚生労働省発案の独自単位かもしれない。。

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2007/08/28

「あわすとでーる」とはどんな技術?

FujiSankei Business iのニュース(8/28)から。

 凸版印刷は、証券の印刷などに使う偽造防止技術を応用し、絵柄の中に文字や画像を隠した印刷物に特殊なシートを重ねると、隠れた文字や画像が現れる特殊な印刷商品「ステルス(隠匿)型あわすとでーる」を開発、9月1日から販売を開始する。こうしたステルス型商品の販売は国内印刷会社で初めて。同社は、特殊なシートを使わないと隠れた文字や画像が分からないという特徴を生かし、児童向けの雑誌・書籍、問題集、集客・販促ツールなどに売り込む考えで、2009年度までに4億円の売り上げを見込む。

 印刷物は、規則正しく並んだ点や線が重なり合ったときに「モアレ現状」と呼ぶ縞(しま)状の斑紋が発生する。この現象を利用し、特殊なシートを重ねると隠れた文字や画像が浮かび上がる仕組みで、偽造防止などに利用されている。

 凸版印刷は、この技術を応用し、隠したい場所を砂目模様にした商品「あわすとでーる」を01年4月に発売した。その後、隠れた画像をより見やすくした「あわすとでーるネオ」などを開発。食品・飲料業界や流通業界を中心に、ネオだけで20社以上に納入している。

 今回のステルス型は、「モアレ現象」の模様の構成を改良することで、砂目模様を使わずに、印刷物の絵柄のどこにでも文字や画像を隠せるようにした。このため、デザインの自由度が大幅に向上し、出版物をはじめ、くじ、ポスター、チラシ、ダイレクトメールなどさまざまな分野で利用しやすくなったという。

モアレ現象といえば、レースのカーテンが重なった部分に干渉により縞模様が現れるようなものという程度の理解なのだが、ウィキペディアの説明にも、「モアレを有用なものとして利用する分野もある」と書かれており、今回の技術はその有効利用の例なのだろう。凸版印刷のニュースリリースには、ステルス型の「あわすとでーる」の見本の写真が掲載されているのだが、文字が隠れた状態の写真や、文字を浮かび上がらせるための特殊シートの写真が載っていないので、いまいちよくわからない。

この技術は、確かに偽造防止などで実用化されているようだが、なかなか実際の技術の中身が見えてこない。そこで、凸版印刷の特許を探してみたところ、特開2004-174880特開2004-230572あたりがこの技術に関連した特許のようだ。

この明細書によると、従来から「万線モアレ方式」と呼ばれる偽造防止技術があり、凸版印刷の「あわすとでーる」はそれを改良したものとのこと。元々の万線モアレ方式は、一定のピッチで並べた多数の線の一部を任意の形状になるように1/2ピッチずらして印刷することで潜像を作成し、これに同じピッチの多数の線を印刷した透明シートを重ねあわせることで、1/2ピッチずれた潜像部分だけを浮かび上がらせるという原理のようだ。うーむ、これってモアレ現象なのだろうか?

一方、特開2004-174880の技術は、ピッチ、幅、形状が均一ではない変形万線パターンをベースに、1/2ピッチずらして潜像を作成したものがベースとなっているようだ。図面を使って具体的に説明されているのだが、ちょっと変えただけのようでいてかなり複雑で、何だかよくわからない。この特許の図面を実際に透明フィルムにコピーして重ねてみると実感できるかもしれない。

特開2004-230572の技術は、恐らく今回のステルス型のものと関連するもので、カラー印刷の中に潜像が隠れていることが一見してわからなくすることができるようだが、かなり印刷業界の知識がないと難しくて理解できそうもない。。

ということで、面白そうな技術なのだけど、結局よくわからないままという消化不良状態。。 とりあえず、モアレ現象を積極的に活用することで、直接視認できないけれど、隠れた文字や図を浮かび上がらせることが可能で、これが偽造防止にも使われるってことだけは何となく理解できたかも。。

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2007/08/24

最古のダイヤモンド

LiveScienceの記事(8/22)から。Diamonds Nearly as Old as Earth

Diamonds are indeed forever, or at least nearly as old as the Earth, a new study shows.

Scientists have unearthed diamonds more than 4 billion years old and trapped inside crystals of zircon in the Jack Hills region in Western Australia. Nearly as old as Earth itself and considered the oldest terrestrial diamonds ever discovered, the gems could give insights into the early evolution of our planet's crust.

オーストラリアの西部にあるジャックヒルという場所で採取したジルコンの結晶中から40億年以上前のダイヤモンドが見つかったというニュース。地球の年齢はだいたい45億年くらいなので、かなり古いと言える。この発見のポイントは、
When the molten Earth cooled, the liquid lava gelled into rocks. Details about the rocks and when they began to form, a subject of intense debate, have been limited by sparse data.

One such debate centers on whether early Earth was covered by oceans of hot lava or if the planet's surface had cooled enough for rock formation and was covered instead by oceans of water.

Zircon crystals could hold the answer. These crystals are tough and relatively resistant to melting. As a result, they retain their chemical nature and can provide vital clues about past events that occurred in the Earth's crust and mantle.

Recent studies of zircons have suggested the Earth might have cooled much more rapidly than previously thought, with the continental crust and oceans forming as early as 4.4 billion years ago.

初期の熱いドロドロに溶けた地球がいつ冷えて地殻が形成されたのか、という問いに対する答えが、この古い岩石から得られるということのようだ。ジルコン結晶は熱に対して強いため、過去に地殻やマントルで起きたイベントに関する情報をいろいろと与えてくれるのだが、最近の研究では44億年前には大陸地殻や海洋が形成されていたと推定されているとのこと。ジルコンはZrSiO4であり、その融点は1680℃程度で、それほど熱に強いとも思えないのだが。。 なお、ジルコンは、放射年代測定に使われる岩石のようなので、その関係もあるのかもしれない。
The scientists, led by Martina Menneken of the Institute of Mineralogy, ran chemical analyses of the zircons, finding the ancient crystals (and thus the enclosed diamonds) were more than 4 billion years old. That's nearly a billion years older than the previous oldest-known terrestrial diamonds and suggests the diamonds were present in material that crystallized within 300 million years of the formation of Earth, the scientists say.
今回、このジルコン結晶を詳細に調べていたら、中からダイヤモンドが見つかったtということのようだ。今までに知られていた地球のダイヤモンドよりも10億年以上古いものらしい。terrestrialという形容詞がついているのは、今までに隕石中にダイヤモンドが見つかっているためだろうと思う。今回のダイヤモンドは恐らくその状況から隕石由来ではなく、地球で生成したものと判断されたようだ。

今回の発見で、40億年前には地球上でダイヤモンドが生成する条件を備えた場所があったことになり、それには高圧が必要で、そのためにはある程度以上厚い地殻が必要だということで、初期の地球の形成過程がいろいろとわかってくるようだ。

この研究はNatureに掲載されたということで、日本語アブストラクトを見てみると

最近、ジャックヒルで得られた42億5,200万年前のジルコンで微小なダイヤモンドの包有物が複数発見され、その中には、地球上の岩石中で見つかった最も古いダイヤモンドに当たるものも含まれている。年代に広がりがあることは、ダイヤモンドの形成に必要な条件が地球初期に何回か繰り返し現れたか、過去に形成されたダイヤモンドがかなり再循環したことを示している。初期地球の条件が特異なものでないかぎり、少なくとも42億5,200万年前には比較的厚い大陸リソスフェアと地殻マントル間の相互作用が生じていたことをこの発見は示唆している。
とある。なお、同じニュースを報じるBBC NEWSには、このジルコンには高圧に曝された形跡が見られないため、このダイヤモンドの由来の解釈については異論があるということも書かれている。

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2007/08/21

「チェルノブイリの森」

今年の夏休みに読んだ本。たまたま、チェルノブイリの原子力発電所の事故のことを少し調べていたので、書店で本書を見つけ、興味を持って読んでみた。帯には

人類、放射能、野生動植物。最後に残るのは何か

汚染地帯には、植生がもどり、希少種の動物が集まり始めた。ここでは放射能をも取り込んだ、新しい生態系が生まれようとしているのか。

というなかなか興味深いコピーが載っている。著者はウクライナ系のアメリカ人ジャーナリスト。チェルノブイリ事故の後、ウクライナ共和国のキエフに移住し、ロサンゼルスタイムズ紙のキエフ特派員として何度も現地を訪れ、そのレポートをまとめたものが本書ということらしい。

チェルノブイリの森 -事故後20年の自然誌-
 メアリー・マイシオ 著 bk1amazon

なかなか面白い内容だった。チェルノブイリ原子力発電所で起きた事故の内容や原因などについてはほとんど何も書かれていないし、本書の性質上、放射線に関連するさまざまな数値や単位がたくさん出てくるは仕方ないところなのだが、全体としてはとても読みやすい。

著者の原子力発電に対するスタンスは、「はっきり述べておくが、私は、かつては原子力の利用に断固として反対していたが、今では気持ちが揺れ動き、中途半端な支持者になった - 少なくとも、化石燃料への依存を減らす一定の猶予期間を設け、そのあいだに代わりのエネルギー源について研究を進めるという政策を支持している。」というもので、本書も単に原子力の恐怖を書き連ねたようなものではなく、非常に中立な視点で、淡々と事実をレポートしているといった感じを受ける。

チェルノブイリの原発事故が起きたのは1986年4月26日。本書の原著は2005年に発行されており、出てくる内容は事故後10年目くらいから2004年頃までの現地の様子である。現地は、現在も原子力発電所を中心として半径30kmが原則として立ち入り禁止となっており、「ゾーン」と呼ばれている。半径30kmがどの程度の大きさかというと、中心を東京駅に置くと、横浜・町田・国立・所沢・大宮・柏・八千代・千葉の当たりが大体30km圏内となる。要するに、東京都23区全域に周辺の市をいくつか加えたような広大な範囲がすべて立ち入り禁止となっているわけだ。

本書では、著者が許可を得て何度もゾーン内を訪れ、そこで見た植物、鳥、獣、魚、人々についてのレポートを中心として話が進む。どうやら事故後約20年が経過し、既にゾーンは地球上でも稀に見るような「自然の楽園」となっているようだ。放射線のレベルはまだ非常に高い所が多く、通常の安全基準から考えると、到底永住できるような場所ではないのだが、それでも植物、鳥、獣、魚が事故以前よりも明らかに増え、そして以前は住まなかったような希少種が新たに棲み付いているが見つかったりもしている。また、立ち入り禁止となった地域に元々住んでいた人のうち何人かが危険を承知で、ゾーン内の元の家に戻って暮らしているようだ。

事故当時は、今後何百年もの間、人類が住めないどころか、草木も生えない不毛の地になるとか、放射線の影響で巨大化したり、奇形化した生物が発生するというようなオドロオドロシイ噂話が伝わったようだが、自然はもっとはるかにしたたかであるとも言える。実際、白血病やその他の放射線に起因するがんなどの発生数は当初の予想をかなり下回っているようで、この分野に関しては今回の事例を解析することも重要な教訓となりそうだ。

さて、たとえ動植物が繁栄しているとしても、とんでもない放射線が飛び交っているような土地が本当に「自然の楽園」と呼べるのか?というのは、本書を通して流れる著者の疑問である。確かに、皮肉なことではあるが、人間の関与がないということが如何に動植物に取って有利に働くのか、ということを如実に示している事態ではある。

しかし実際には、かなり強い放射線が出ているわけで、土壌、水、植物、動物などもそれぞれに様々な放射性物質を多量に含んでおり、当然これらの放射線の影響を受けて、病気になったり、死んでしまった個体の数は相当な量に上るようだ。結局、現地で観察されるのは、そういった淘汰をくぐり抜けた、放射線に対して強い種や強い個体である考えられている。被害も大きかったけど、それにもかかわらず結果として(見かけの?)繁栄を得ることができたということらしい。

本書を読むと、事故直後に事故現場の後処理を行った人たちの決死の作業もすさまじかったのだろうな、と思わずにはいられない。驚かされるのは、本書を読むまで知らなかったのだが、チェルノブイリ原子力発電所の事故を起こした4号炉以外のいくつかの炉は、2001年に停止するまで運転を続けたということ。発電所の作業者がトータルで浴びた放射線は一体どれだけになるのだろう? 

そして、本書によると、現地では現在も廃炉のための作業や、事故のあった原子炉を覆う「石棺」をさらに新しい安全なシェルターで囲うための作業があり、多くの人々が働いているのだが、ゾーン内のほかのどの職業グループよりも高い放射線を浴びている石棺の作業員のほうが、それほど放射線量の高くないところで働いている人よりも健康状態がおおむね良好なのだそうだ。これは

現在シェルターで作業している人たちは、選別されています。体質の弱い人は亡くなったり、健康を害したりして、ゾーンではもう働けないのです。残っている人たちは、放射線に対する抵抗力が強いんです。(p.321)
ということのようだ。要するに、現在現地で元気に作業している人の背後には、健康を害して働けなくなった多くの人たちがいるということだ。動植物の場合なら、淘汰されたという解釈を、複雑な気持ちで受け入れることになるのだろうが、人に対しても同じような「選択」が起こったという事実は、今の日本などが要求する安全レベルとは桁が違いすぎて逆に現実感がない話に聞こえてしまう。

この事故の影響で放射線を浴びた人や動植物の健康状態を今後とも追跡することで、得られるものも多いだろうと思うし、今後、この地がどうなっていくのか、どんな形で何世代も先の未来にこの「遺産」を残していくのか、まだまだ目が離せないという印象だ。

なお、チェルノブイリ原子力発電所をグーグルマップで見るとこんな感じで、さらに高倍率で見るとかなり細部まで判別できる。事故当時の衛星写真配置図と比べてみると面白い。

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2007/08/20

窒化ホウ素が紫外線の光源となる

時事ドットコムで見つけたニュース(8/18)から。「白い黒鉛」高純度結晶、簡単に=深紫外線光源、記録装置に応用へ-物質機構

 昔から「白い黒鉛」と呼ばれ、化学物質を融解するるつぼなどの材料に使われてきた「六方晶窒化ホウ素」の高純度結晶を、通常の気圧下で簡単に合成する技術が開発された。物質・材料研究機構(茨城県つくば市)の研究チームが18日までに米科学誌サイエンスに発表した。
 波長が短い深紫外線の光源として、DVDなどの光ディスクの記録容量を飛躍的に高めたり、ダイオキシンなどの有害物質を分解したりするのに応用が期待される。
何だかわかったようなわからないようなニュースである。六方晶窒化ホウ素(hBN)が、昔から「白い黒鉛」と呼ばれるとは知らなかった。ゴム業界や製紙業界では、シリカ(ニ酸化ケイ素)のことを「ホワイトカーボン」と呼ぶようだが、それと比べても「白い黒鉛」というのは字面に違和感のある呼び方だな。。

さて、このニュース、探してみるとFujiSankei Business i(8/17)の簡便に深紫外線光源…六方晶窒化ホウ素、常圧合成はかなり詳しく、またポイントを突いているのでわかりやすい。ポイントは

 物質・材料研究機構(物材機構)の光材料センター光電機能グループは、波長350ナノ(1ナノは10億分の1)メートル以下の深紫外線領域で高輝度に発光する六方晶窒化ホウ素(hBN)を1気圧下で簡便に合成する技術を開発した。高密度光情報デバイスの記録や、有害物質の分解、殺菌用などへの応用が期待できる。

 深紫外線光源は、これまで窒化アルミニウム系での研究開発が進められている。研究グループは近年になって深紫外線発光が知られるようになったhBNに対し、特殊な高圧合成装置を必要としない合成法を発見した。

というところで、hBNは発光素子として有望な素材であり、その高純度結晶を常圧で簡単に合成する技術を見出したということのようだ。物質・材料研究機構(NIMS:新聞では物材機構と略すようだ)のリリースを見ると、hBNもいわゆるIII-V族窒化物半導体としてGaNやAlNと同じ仲間なのだが、今まで高純度結晶を作ることが難しく、ルツボなどの耐熱材料としてしか使われてこなかったとのこと。確かにウィキペディアでも、用途としては、固体潤滑剤、離型剤、ルツボ、化粧品などしか書かれていない。

ところが、実は高純度のhBNは深紫外線を高輝度で発光する、直接遷移型ワイドギャップ半導体として応用可能な材料であることが2004年に明らかとなったとのこと。紫外線の分類は色々な流儀があってややこしいのだが、たとえば近紫外線、遠紫外線、真空紫外線などと分類される。深紫外線というのは波長が300nm以下とか350nm以下の紫外線(近紫外線の一部、遠紫外線および真空紫外線の一部にまたがる)を指すようだ。(参考) 波長が200nm以下のものは、大気(酸素や窒素)で吸収されるため真空紫外線とも呼ばれているのだが、ここで高密度光情報デバイスなどへの応用が期待されているのは、空気中で使用可能で、できるだけ波長が短い光ということになり、狙い目の波長は200~300nmの範囲ということになる。

青色LEDで有名なGaN(窒化ガリウム)の発光波長は近紫外領域の365nmであるのに対し、AlN(窒化アルミニウム)は深紫外領域の210nm、そしてこのhBNの発光波長は215nmとのこと。高密度記録のニーズはかなり大きいので、今後はAlNとhBNによる激しい開発競争が見られるかもしれない。(実用化はAlNがかなり先行しているようだが)

それにしても、今回見出された新たな合成方法というのが、ニッケルなどの遷移金属系合金を溶媒として、ここから析出させる方法のようなのだが、窒化ホウ素がそんな金属に溶けるというのもちょっと意外だし、そこから高純度で析出するというのも面白い知見だ。しかも、サファイア基板を使って薄膜結晶を成長させることもできたということだ。

ところでリリースを見ると、今回観測したのは自由励起子発光というものらしい。自由励起子とは用語解説によると、「半導体中に励起された電子と正孔がクーロン相互作用により互いに束縛された状態のこと。自由励起子に関連する発光および吸収を調べることにより、物質固有の電子構造の情報を得ることができる。」とある。この研究では高品質の単結晶ができたわけでもないようだし、もちろんドーピングによってn型やp型の半導体結晶を作成したり、LEDを作ったわけでもない。ということで、実用化レベルの発光素子を作るまでにはまだまだハードルが色々とありそうだ。

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2007/08/10

260回目の献血

前回7/20以来、21日ぶり。今回は横浜駅西口献血ルームにて。

強烈に暑い一日だったこともあってか、思ったよりも人が少なかったようだ。問診後の検査では、最初から血小板成分献血をお願いしたいということで、専用の採血器具を使って1本分だけ採血した。(相模大野献血ルームでは、1本目の血液を分析して、結果を見てから血小板を取るか血漿を取るかを決めているので、検査の間は針が刺さりっ放し) ここで使っている1本分だけを取る採血器具は、注射針に外径が5mm程度で長さ20cm程度のシリコンチューブが接続しているだけのシンプルなもの。

今日のおみやげの選択肢は、折り畳み傘、歯みがきセット、Tシャツの3種類。今回は、紺色のTシャツをもらって来た。

20070819tshirt_s

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2007/08/08

ココログ43か月

ココログを始めて3年と7か月が経過。1か月当たりのカウンターの伸びは前月同様の21000程度と順調なのだが、実は8月に入って急速にアクセス数が減っているようだ。

 1か月目:900     2か月目:4500    3か月目:11700    4か月目:19000
 5か月目:32300   6か月目:43500   7か月目:54500    8か月目:72000
 9か月目:87700   10か月目:105400  11か月目:125400  12か月目:140600
13か月目:163000  14か月目:179300  15か月目:194700  16か月目:205300
17か月目:216800  18か月目:231700  19か月目:251100  20か月目:276400
21か月目:301200  22か月目:326400  23か月目:351400  24か月目:372400
25か月目:398100  26か月目:419300  27か月目:436100  28か月目:452700
29か月目:474500  30か月目:492100  31か月目:510100  32か月目:529800
33か月目:548600  34か月目:565300  35か月目:583300  36か月目:598200
37か月目:619200  38か月目:640000  39か月目:657000  40か月目:673500
41か月目:694300  42か月目:715400  43か月目:736900

この1か月のアクセス解析結果は以下の通り。

(1)リンク元
 1位 http://www.google.co.jp 全体の22%(前回1位)
 2位 bookmark 全体の19%(前回2位)
 3位 http://www.google.com 全体の5%(前回3位)
 4位 http://search.goo.ne.jp 全体の1%(前回5位)
 5位 http://a.hatena.ne.jp 全体の1%(前回6位)

順位に特に大きな変動はないのだが、グーグル経由の訪問者が8月になってから減少しているようだ。検索順位の算出方法に何か変更があったのだろうか? でも、ブログ検索しみても、そのような話は出ていないようなので、たまたまこのブログにたどり着くような人たちが夏休みに入っただけかもしれない。。

(2)検索キーワード
 1位 乳酸(前回3位)
 2位 コスモプラント(前回34位)
 3位 酸素水(前回2位)
 4位 注射針(前回4位)
 5位 効果(前回5位)
 6位 改造(前回9位)
 7位 アメリカ(前回18位)
 8位 発光ダイオード(前回8位)
 9位 ハーモニックドライブ(前回10位)
10位 地震(前回圏外)
11位 自転車(前回7位)
12位 天気予報(前回11位)
13位 フラーレン(前回14位)
14位 天気(前回31位)
15位 レスベラトロール(前回17位)

ほぼいつもどおりのキーワードが順当に上位を占めたようだ。逆にいうと、特に大ヒットするようなホットな記事がなかったのが、訪問者数が減少傾向にある理由なのかもしれない。

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2007/08/07

白色発光ダイオード照明の効率

日本化学会が発行している、化学と工業 2007年8月号が送られてきたので、見ていたら、「発光ダイオードによる次世代固体照明の実現」という記事が載っていた。著者は、日亜化学工業の坂東完治さん。たった3ページの総説記事だが、白色LED照明の現在の実力や今後の開発について、とても良くまとまっていて参考になる。

実は、このブログでは、2005年の9月に青色発光ダイオードの進歩とLED照明というエントリを書いたのだが、発光効率とかエネルギー変換効率の他の照明(白熱電球や蛍光灯)との比較に関して、やや混乱したままの状態になっており気になっていたので、最新の状況を整理しておきたい。

まず、白熱電球や蛍光灯などとの効率の比較だが、各種照明の光源効率の推移を示したグラフが載っている。

Efficiency_of_white_light

ここで、光源効率(lm/W)とは、光源の発する光量(全光束:ルーメン、目の視感度を考慮した値)を消費電力(ワット)で除した値とのこと。このグラフを見ると、白熱電球の光源効率が 20 lm/W 程度であるのに対し、蛍光灯が最大で 100 lm/W 程度。白色LEDは年々光源効率が急上昇しているが、2007年現在で 100 lm/W 程度のようだ。なお研究室レベルでは既に 150 lm/W まで来ており、高圧ナトリウムランプを超えて、白色光源の中でも最高レベルを実現しているとのこと。

一方、白色LEDについてのエネルギー変換の内訳も載っており、100 lm/W レベルの白色LED (青色GaN-LED + 黄色YAG蛍光体)の場合、

 入力電力 100%に対し、可視光のエネルギーが 32%、熱損失が 68%
 可視光 32%のうち、青色光が 10%、黄色蛍光が 22%
 熱損失 68%のうち、光ロスが 16%、チップ内ロスが 38%、半導体抵抗等が 14%

とのこと。ちなみに、青色LEDの発光効率(発光再結合)は48%とのことであり、このうち、青色光および黄色光として外部に出なかった分(パッケージ内の吸収、反射、蛍光変換ロス)が光ロス16%に相当する。また、青色LEDで光に変換されなかった52%が、チップ内ロスと半導体ロスの合計に相当する。一方、他の照明と比較してみると、

 白熱電球では入力エネルギーのうち、可視光になるのが約 10%
 蛍光ランプは 入力エネルギーのうち、可視光になるのが約 25%
 白色LEDでは 入力エネルギーのうち、可視光になるのが約 32%

とのこと。従って、白色LEDの場合、エネルギー変換効率としては白熱電球の3倍以上、蛍光ランプの約1.3倍ということになる。つまり、エネルギー効率や光源効率は既に蛍光ランプを超えているのは確かなようで、同じ明るさで照らすなら白色LEDが最も消費電力が小さく、発熱も小さくて効率的ということになる。

なお、LEDは効率は良いものの、一つ一つの出力が小さいという問題があったのだが、現時点では、定格出力が 1~10W 程度の大電力パッケージが作られているほか、LED 1個で 40W 電球並みの 400 lm を超す光束のものまで登場しているとのこと。

他にも、この総説記事では、各種白色光源のスペクトル分布の話や、光の質(演色性など)の改良などについても簡単に触れられている。

現実に、自動車用のヘッドランプにも採用(小糸製作所プレスリリース)されているし、照明用途の現状はこういった状況まで来ているようだ。

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2007/08/01

レーザープリンタからのトナー放出による健康リスク

ITmedia News(8/1)から。「レーザープリンタに健康リスク」、研究者が指摘

 オフィスや家庭で使われているレーザープリンタに、健康上のリスクをもたらす可能性がある。米国化学会の学会誌で、このような研究結果が発表される。

 この研究は豪クイーンズランド工科大学のリディア・モラウスカ博士が実施したもの。62機種のレーザープリンタについて、トナー粒子の放出を調べた。調査対象には、キヤノン、Hewlett-Packard(HP)、リコー、東芝などのブランドで国際的に販売されている、米国やオーストラリアで人気の高いモデルが含まれる。

 モラウスカ氏は論文の中で、特定のレーザープリンタはトナーの細かな粒子を空中に放出し、人間がそれを肺に吸い込むと健康を害する恐れがあると説明している。同氏らは、62機種のうち17機種を、インクの代わりにトナー粒子を多く放出する「高粒子放出機」と分類している。実験で使ったある機種では、放出される粒子の割合が、たばこから出る粒子状物質の割合と同程度だったという。

 一方、62機種のプリンタのうち37機種は、空気を汚染する粒子の放出がまったくなかった。6機種は低レベルの放出量で、2機種は中程度。

 ほとんどのプリンタが放出する粒子は超微細であり、有害物質が肺の狭い気管にも容易に入り込んで「深刻な健康上の危険」をもたらす恐れがあるとモラウスカ氏は報告している。また、プリンタ使用によって作業中のオフィス内の粒子レベルは5倍に増え、新しいトナーカートリッジを使っているときと、トナーが多く必要な画像を印刷するときに、粒子の放出が多くなることも示された。

原理的に考えても、多少のトナーの大気中への放散は避けられないような気もするが、このような話が今までなかった方が不思議といえば不思議。ただし、この研究では、ある種のレーザープリンタから室内へのトナー粒子の放出を確認したというもので、トナー自身の有害性や、その結果として想定される健康リスクがどの程度のものなのか、などについては何も言及していないようだ。

少し探してみると、CTV.caのニュースで、もう少し詳しい情報や、今回評価したプリンタのリストが載っている。この研究はオーストラリアの大学でのもので、テストしたプリンタはほとんどがHPのプリンタなのだが、東芝のプリンタも1機種だけ高放出機に含まれている。でも、東芝のほとんど同じ型番の機種は無放出機にランクされているし、HPのプリンタも型番とトナー放出の有無の関係が全然読み取れないところから推定すると、今回の結果は、それぞれの機種固有の特性というよりは、各機器の機体差とか、機器の調子の良し悪しのようなものも関係しているような気もする。

さて、ウィキペディアによると、トナーは粒子径が5μm程度で、マウスでは肺がんが観測されたとのことだが、そんなに有害性の疑われるものが、一般製品に多量に使用されているとも思えない。たとえばMSDSを見ると、通常想定される濃度では問題なさそうだし、含有するカーボンブラックのIARC発がん性分類が2B(ヒトに対して恐らく発がん性がある)ということで、日常的に生のトナーを扱うのでなければそれほど怖がる必要はないだろう。

実際のトナーはこちらでも解説されているように、スチレン-アクリル系などの樹脂とカーボンブラックなどの着色剤などを混合し、これを溶融し、さらに粉砕して8μm程度にしている。

今回の研究では、オフィス内の環境を調べようとしたら、意外にも外よりもオフィス内の環境の方が粒子が多いということがわかり、詳しく調べてみたらプリンタが微粒子の放出源であることが明らかとなったため、改めて検討を行ったということらしい。この結果から、プリンタからのトナーの放出レベルを規制すべきだ、と述べているようだが、調べてみると既に環境ラベルの認定では、プリンタやコピー機からのトナーの放出についても考慮されているようだ。

たとえば日本のエコマーク(プリンタトナーカートリッジ)やドイツのブルーエンジェルなどでは、トナー(粉塵)の放出量や、トナーの有害性が認定の基準となっている。

なお、今回の研究はJACS Environmental Science and Technologyに掲載されるらしいが、なぜか今のところこちらでその論文原稿?が読めるようだ。

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2007年7月の天気予報傾向

東京地方の過去の天気予報 のデータ更新を終了。

気象庁の発表でも、今年の7月の東京地方は気温が低め、降水量が多め、日照時間が少なめということで、いかにもジメジメとした陰性の梅雨という感じの月だったけど、おまけに台風がやってきたりして、豪快な大雨もありで、全然夏っぽくなかった。

特に月の前半は、最低気温も最高気温も変動が小さく、後半は気温変動が大きかったのだが、気温予報はこの大きな変動に全然付いていけなくて、実際に外出時に前日の気温予想も全然あてにならない日が多かったような印象がある。

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