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2007/09/06

小惑星の玉突き

NIKKEI NETの記事(9/6)から。恐竜絶滅させた隕石・小惑星の玉突きで飛来・米チーム解析

【ワシントン5日共同】約6500万年前に地球に衝突し、恐竜を絶滅させた隕石は、その9500万年前に二つの小惑星が衝突してできた破片の一つが飛来したものだとする解析結果を、米サウスウエスト研究所(コロラド州)のチームが6日付の英科学誌ネイチャーに発表した。

 別の研究者は「太陽系で起こっているこうした『死のビリヤード』をもっと理解する必要がある」と指摘している。

 チームは、火星と木星の軌道の間の小惑星帯にある直径約40キロの小惑星「バティスティーナ」と、動きや岩石の性質が似た数千に上る一群の小惑星に着目。

 コンピューターで運動を解析したところ、約1億6000万年前に、もともと直径約170キロだったバティスティーナに直径約60キロの別の小惑星が秒速3キロで衝突し、数千の破片が発生したとの計算結果が出た。

 この一部が地球方面に飛び出し、直径約10キロの破片が約6500万年前に地球に衝突した可能性は90%以上と推計されるという。

この記事を一読すると、ある小惑星がバティスティーナという小惑星に衝突し、その時に飛び散った破片のひとつが真っ直ぐに地球へと向かい、それが運悪く地球に衝突したというイメージが絵に浮かぶ。何といっても、「死のビリヤード」とか「小惑星の玉突き」なんて書いてあるし、「地球方面に飛び出し」という表現もその印象を裏付けてくれる。

しかも、現在の小惑星の軌道から、多数の小惑星の軌道を時間を逆算して計算することで、それらが2つの小惑星が衝突してできたものだということや、その時の破片の1つが地球を直撃したということまで計算できたかのように読み取れる。

でも、よく読んでみると、恐竜を絶滅させたという隕石の衝突は約6500万年前の事件であり、その原因となったとされるバティスティーナと別の小惑星の衝突は約1億6000万年前の事件だと書かれている。ということは、バティスティーナと別の小惑星の衝突で生じた破片が、地球方面に飛び出し、それから約9500万年も経過した後にようやく地球と衝突したということになる。。 小惑星帯から地球まで9500万年もかかったということは、当然その間にお互いに太陽の周りを何万周?もしているだろうし、いくら何でも、ビリヤードという表現は随分とミスリーディングな比喩という気がするぞ。

実際には、小惑星同士の衝突で生じた多数の破片が、太陽系の広い範囲に広がり、その内の1つがたまたま9500万年後に地球に当たったというイメージだろうか。Natureの論文要旨でも、

キロメートル規模の天体が月や地球大気に衝突する長期的な平均衝突フラックスは、一連の証拠によると、過去1億年間で2倍かそれ以上に増加したようだ。 Bottkeたちは、この急激な増加は恐らく、小惑星バティスティーナの親天体がおよそ1億6,000万年前に主小惑星帯の内側で破壊されたためであることを、数値シミュレーションを用いて示している。破片はその後、地球型惑星に衝突する可能性のある軌道を巡るようになった。この小惑星のシャワーが、 6,500万年前の白亜紀/第三紀境界の大量絶滅を引き起こしたチクシュルーブ(Chicxulub)衝突天体の起源として、最も可能性が高い。
とあり、ピンポイントで1個が地球に向かって飛んでくるイメージではなく、小惑星のシャワーという表現が使われている。 Sientific Americanの記事によると、
Bolstering their statistical argument, Bottke and his colleagues cite ground-based chemical scans of 298 Baptistina that indicate it consists of a substance similar to carbonaceous chondrite, a rare material found in some asteroids.

"This is front page news," say geologists Philippe Claeys and Steven Goderis, both at Vrije University in Brussels, in an editorial accompanying the paper, "as a [six-mile-] sized carbonaceous chondrite is most probably the projectile that formed the Chicxulub Crater.

The chondrite, which is rich in water and carbon compounds, cropped up in samples dug from beneath Chicxulub. "

恐竜を絶滅させた隕石の衝突によって生じたとされる、メキシコのユカタン半島のチクシュルーブ・クレーターから見つかる特徴的な隕石由来の組成と、地球から観測したバティスティーナ族小惑星の組成が似ているという点を証拠の1つに上げているようだ。本当は、はやぶさタンの後継者にバティスティーナまで行ってもらい、サンプルを採取して帰ってきてもらうと良いのだろうけど。。 なお、
The researchers say the same bombardment may also have blasted the 53-mile-wide lunar crater Tycho, formed about 109 million years ago during the shower's calculated peak.
月面のクレーターの1つ ティコ も、同じ1億6,000万年前の衝突で生じた多数の破片の1つが、約1億9百万年前に月と衝突してできたものと推定されるとのこと。ティコ近辺からはアポロによって地表のサンプルを採ってきているようなので、やはり岩石の組成からの推定だろうか?

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