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2007/09/04

ヒトゲノムの個人差は予想以上に大きそうだ

時事ドットコムで見つけたニュース(9/4)から。米ベンター博士のゲノム公表=詳細論文で世界初-患者の体質に合う医療へ基盤整備

 米バイオ・ベンチャー企業セレラ・ジェノミクス社を設立し、日米英などの公的研究機関グループと人間の全遺伝情報(ヒトゲノム)の解読を競い、2000年に同着で達成した米国のクレイグ・ベンター博士(60)のゲノムが解読され、詳細な分析結果とともに公表された。同博士が現在率いるJ・クレイグ・ベンター研究所が4日、インターネットで無料公開されている米科学誌プロス・バイオロジーに論文を発表した。

 5月には、DNAの二重らせん構造発見でノーベル賞を受賞した米分子生物学者ジェームズ・ワトソン博士(79)のゲノムが、米バイオ企業「454ライフサイエンシズ」とベイラー医科大によって解読され、塩基配列データが公表された。しかし、特定の個人のゲノムが、遺伝子の個人差の分析や親族の病歴などの情報とともに公表されたのは世界で初めて。

あのヒトゲノム計画を進めたセレラジェノミクスの設立者、ベンターさん個人の完全なDNA配列が公表されたというもの。このニュースに関して英語のニュースを見てみると、Study: Humans' DNA not quite so similarという USA TODAY の記事などが見つかる。この記事によると、
People are less alike than scientists had thought when it comes to the billions of building blocks that make up each individual's DNA, according to a new analysis.

"Instead of 99.9% identical, maybe we're only 99% (alike)," said J. Craig Venter, an author of the study - and the person whose DNA was analyzed for it.

ベンターさんのDNA配列は、従来解読された(平均的な)ヒトゲノムと比べてみると予想以上に大きな違いが見られるようだ。従来、ヒトのゲノムは99.9%一致し、一人ひとりのゲノムの違いはわずか0.1%程度だと予想されていた(参考)が、今回の結果から考えると、99~99.5%程度の一致度で、個人差は0.5~1.0%程度あると推定されるとのこと。もちろん、ベンターさんが特別に変わったDNA配列の所有者でなければという前提だが。。
The 99% figure is close to what scientists have often estimated for the similarity between humans and chimps. But the human-chimp similarity drops to more like 95% when the more recently discovered kinds of DNA variation are considered, Venter said.
従来、ヒトとチンパンジーのDNAは約99%一致すると考えられていたのだが、これも恐らく95%程度ではないか、ということらしい。まあ、今後多くの人や動物のゲノム配列が完全に解読されていくことで、この辺の数字はまだまだ変わってくるのだろうけど、とりあえず、従来の一致度は少し高すぎたと言えるのかもしれない。(もっとも、ヒトの遺伝子の個人差は10%という説もあるようだ。)

一方、同じニュースを扱った washingtonpost.comのMom's Genes or Dad's? Map Can Tell.という記事では、今回の研究結果の中の重要なポイントとして、従来解読されたDNA配列は、実際には染色体ペアのうちの一方のゲノム(ハプロイドゲノム)だったのに対し、今回解読されたベンターさんのDNA配列は両染色体のゲノム(ディプロイドゲノム)であるという点に言及している。これにより、父および母からの遺伝の様子がかなり詳細にわかるようになり、今後、この観点から詳細な検討が行われるようだ。

なお、今回のベンターさんの研究内容は、PLoS Biologyに掲載されている。

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 島根大学の客員教授である久保田邦親博士らが境界潤滑の本質的な原理をついに解明。名称はCCSCモデル「通称、ナノダイヤモンド理論」は開発合金Xの高面圧摺動特性を説明できるだけでなく、その他の境界潤滑現象にかかわる広い説明が可能で、更なる機械の高性能化に展望が開かれたとする識者もある。幅広い工業・産業分野に応用でき今後潤滑油の開発指針となってゆくことも期待されている。

投稿: 低フリクションマルテンサイト | 2017/07/06 13:56

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