Reutersのニュース(10/12)から。口紅の大半から鉛検出、有名ブランドに多く含有=米消費者団体
[アトランタ 11日 ロイター] 米消費者団体は11日、米国で販売されている口紅の過半数から鉛が検出されたという独自の調査結果を発表した。調査は、公衆衛生と環境、女性問題に取り組む団体の連立組織the Campaign for Safe Cosmeticsがカリフォルニア州の試験グループに委託して実施した。
それによると、米日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)(PG.N: 株価, 企業情報, レポート)のカバー・ガール、フランスの化粧品大手ロレアル(OREP.PA: 株価, 企業情報, レポート)、クリスチャン・ディオールといった有名ブランドの製品には特に多くの鉛が含まれていたという。一方、レブロンなど、より廉価なブランドの商品のいくつかからは検出されなかったとしている。
同団体は、口紅はキャンディと同様に口から体内に摂取されるにもかかわらず、米食品医薬品局(FDA)は鉛の含有量について特に制限を設けていないと指摘。
鉛は学習や言語、行動上の問題を引き起こす可能性があり、妊娠中の女性や子どもは特に影響を受けやすい。
最近では、中国製の玩具に鉛が含まれていたことから、3カ月間に商品約2000万個が自主回収(リコール)されたばかり。
口紅などの化粧品は比較的古くから使用されているものであり、それなりに安全性についても実績がありそうだし、おしろいに水銀が含まれていた時代であればともかくも、現時点でアメリカなどの大手メーカーが危険性のある製品を市販しているとはにわかには信じがたい。アメリカのニュースを見てみると、たとえば
USA TODAYでは、
The lead tests were conducted on 33 brand-name lipsticks by an independent laboratory last month on red lipsticks bought in Boston, San Francisco, Minneapolis and Hartford, Conn., according to the Campaign for Safe Cosmetics. The group, which advocates for toxic-free products, said that 61% had detectable levels of lead, and that one-third exceeded the FDA's lead limit of 0.1 ppm for candy. The FDA hasn't set a level for lipstick.
アメリカ国内の各地で購入した33種類の口紅を独立系の機関で分析した結果、61%(20種類)の口紅から鉛が検出されたということらしい。FDAのキャンディについての鉛含有量の安全基準は0.1ppmであり、どうやら今回の口紅からはそれ以上のレベルの鉛が観測されたようだ。一方、化粧品工業界からは
The trade group representing the cosmetic industry issued a statement acknowledging that there "negligible" levels of lead in some lipsticks but that it's inadvertent.
"The average amount of lead a woman would be exposed to when using cosmetics is 1,000 times less than the amount she would get from eating, breathing, and drinking water that meets Environmental Protection Agency drinking water standards."
検出された鉛のレベルは無視できる程度であり、この口紅を使用することで体内に摂取する鉛の量は、食事、呼吸、飲み水などから摂取している鉛の量の1000分の1未満に過ぎないと主張しているようだ。確かに、毎回使用する口紅の量はキャンディ1個よりは相当少ないだろうし、塗布した口紅のうちの大部分は体内に摂取されずに拭き取られるのだろうし、さらに口紅を塗るのは大人の女性ということで、キャンディは子供も食べるということを考慮すると、キャンディと口紅では含有量の基準の設定方法はかなり異なると考えるべきだろう。
この消費者団体 "The Campaign for Safe Cosmetics"のプレスリリースによると、テストした33種類のうち、61%のものから0.03~0.65ppmの鉛が検出され、1/3はキャンディの安全基準である0.1ppmを超えていたが、いずれも鉛を含むとは表示されていなかったようだ。一方、残りの39%からは鉛は検出されなかったとのこと。どの銘柄から鉛が検出されたかなどは、こちらのA POISON KISSというレポートに詳しく載っているが、(残念ながら?)日本製の口紅は調査対象とはなっていなかったようで、リストには載っていない。
業界側の CTFA(Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Association)のリリースによると、
“Despite the negligible levels of lead found in some lipsticks, cosmetic companies are committed to reducing that level even further. For decades, cosmetic companies have worked to minimize all product contamination, including lead. They actively and continually review all raw materials to ensure that they contain the lowest levels of impurities possible. Cosmetic companies have some of the world’s leading chemists, toxicologists, and biologists to evaluate all the safety information.”
そもそも、今回の鉛は意図的に添加したものではなく、他のさまざまな原料の不純物などとして非意図的に混入したものであり、化粧品業界としては過去何十年もこうした不純物の混入を減らすために最大限の努力をしているし、今回検出されたものも全く問題のないレベルである、ということを強調している。
一方、消費者団体側は、現実に鉛が検出されなかった製品もあるわけだし、おもちゃや食品などからは鉛を完全に排除できたのだから、口紅からも完全に鉛を除去できるはずで、厳しい基準を設定して鉛フリーを実現すべきだ、という主張のようだ。今後は積極的に政府や業界に働きかけ、さらに世界に広げたいという意向のようなので、少し注意しておこう。
なお、昨年12月のOKWaveの質問、口紅に含まれているかもしれない鉛と金の関係についてを見ると、質問が世界的なチェーンメールに基づくものだったという点も興味深いが、回答が非常に的確で勉強になる。この回答に出てくるサイトを読むと、"The Campaign for Safe Cosmetics"の主張は、やっぱり不安を煽るだけのありがちな消費者団体の主張だな、という感じがする。
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