非接触磁気歯車とは
nikkei BPnet の記事(10/29)から。“夢の歯車”非接触磁気歯車装置が本格実用化へ
夢の歯車といわれる非接触磁気歯車装置が、様々な産業機械への採用が拡大している。非接触の磁気歯車という名前から、どんなものか大体想像はつくが、調べてみると意外にもこの記事に出てくる松栄工機のもの以外には、実用化されているものはほとんどないようだ。非接触磁気歯車装置は、東北の機械メーカー松栄工機(宮城県大崎市)が開発した。歯車の歯の代わりに磁力を利用して、動力を伝達する。一般の歯車と違って物理的な接触部分がないため、歯車がかみ合うことにより発生する多くの問題をクリアすることに成功した。松栄工機は、この非接触磁気歯車装置の開発によって、2003年に「みやぎものづくり大賞」の最高賞であるグランプリを受賞。2006年には、その技術力が高く評価され、経済産業省の「元気なモノ作り中小企業300社」の1社にも選定された。
様々な装置や機械に歯車は使用されているが、非接触磁気歯車装置の摩擦や接触が発生しない特性を生かして、多くの製造現場での応用が期待できる。「過大な力が一気にかかった時にスリップするトルクリミッターの機能に着目して、最初は風力発電の部品として使えるのではと考え、試作品開発をおこないました。その過程で出会ったのが、磁気歯車の研究を長く手がけておられた東北学院大学の鶴本勝夫教授(機械創成学科)でした。先生の研究室で磁気歯車の原型を見せていただき、これだと思いました」(同社R&Dセンター長・操谷欽吾氏)
同社は鶴本教授から基本技術を学び、試行錯誤を繰り返しながら何とか実用化にまでこぎつけた。実用化の過程では、それまで培ってきた金型加工の超微細加工技術が役立った。現在では、カップリング方式による磁気カップリングとマイタ(直交型伝達装置・同速型伝達装置)のほか、変速機能を持つベベル(直交型変速伝達装置)、磁気歯車、磁気式遊星歯車と5種類の非接触動力伝達装置を取りそろえている。
どんな構造のもので、どんなラインナップがあるのかについては、カタログを見るのが一番わかりやすそうだ。最も単純なものは、永久磁石のN極とS極を円周上に交互に並べた円板(歯車?)が2枚向かい合っているような組み合わせで、磁力によって非接触で回転力を伝達できるものだが、円板の径を変えることで変速もできるわけだ。いかにもありそうだが、何故か今まで同様のものがなかったというのは、何か実用化の壁が存在しているのだろうか?
記事に出てくるように、この分野では東北学院大学の鶴本教授が第一人者のようで、研究室の教授紹介には、磁気歯車の開発裏話が書かれている。最初は本人もうまく動くとは思わなかったとのことだが、動力伝達のしくみにもあるように、磁石の配置が独特のアーチ状となっており、どうやらこの磁石の形状や配置が、高効率で円滑な動力伝達が可能となる秘訣なのだろうと思われる。
技術&事業インキュベーション・フォーラムで解説されているように、非接触で、振動や摩耗などがなく、おまけにトリクリミッター機能を有し、さらにステンレスやガラスなどの隔壁を介して動力伝達が可能など、非常にユニークな多くの特長を持っているし、しかも構造はシンプルということで、磁力が悪影響を与えないような状況では相当面白い装置だと思う。 まあ、結局は価格がネックになるのだろうとは思うけど、用途によっては今後かなり使われるようになるのではないだろうか。
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