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2007/10/09

輸血の際には血液中の一酸化窒素が重要?

Google.Newsで見つけたREUTERSのニュース(10/9)から。Donated blood quickly loses important gas-study

Donated blood quickly loses some of its life-saving properties as an important gas dissipates, U.S. researchers said on Monday, in a finding that explains why many patients fare poorly after blood transfusions.

Researchers at Duke University Medical Center in Durham, North Carolina, have found that nitric oxide in red blood cells is the key to transferring oxygen in the blood to tissues.

This gas appears to break down almost immediately after red blood cells leave the body, rendering much of the blood stored in blood banks impaired, said Dr. Jonathan Stamler, a Duke researcher whose work appears in the Proceedings of the National Academy of Sciences.

献血された血液からNO(一酸化窒素)ガスが失われることにより、この血液を輸血された患者は期待される効果が得られないという話のようだ。血液が献血により体外に出ると、赤血球から速やかにNOガスが失われるとのこと。
"If you don't have nitric oxide in there, you can't get oxygen into the tissues," he said in a telephone interview.

But if you restore this gas, banked blood appears to regain this ability, Stamler said.

さらに、NOが失われると、その血液は酸素輸送能力が低下し、結果として輸血効果が低下するということらしい。ただし、一旦NOを失った血液でも、NOを血液中に戻してやれば、その能力は復活するようだ。

このような保存血液の問題点は、従来から現象としてはわかっていたものの、その理由がわかっていなかったとのこと。今回、NOに着目して調べたところ、血液中のNOは最初の3時間で顕著に低下したとのこと。一方、犬を対象とした実験では、NOを添加した保存血液と添加しなかった保存血液で、酸素リッチな血液の流量に大きな違いが現れたようだ。NOの添加方法などについては、今後さらに検討するとのこと。

NO(一酸化窒素)の生体内での役割については、ウィキペディア血液の話あれこれに書かれているが、主として血管拡張による血流増大作用を担っているようで、それと今回の話が直接リンクしているのかイマイチよくわからない。

一方、爆発物から治療ガスへには、そもそもニトログリセリンが狭心症の治療薬として働く理由を研究する中から、一酸化窒素の血管拡張作用などが明らかとなったストーリーや、一酸化窒素とバイアグラとの関係なども書かれている。さらに、一酸化窒素は体内で作られる一方、すぐに分解してしまうこともわかっており、そうだとすると大量の血液を輸血する場合にその血液中のNO濃度が低いと血流に問題が出ることはありそうに思える。

ここまで書いてから改めてみてみたら、AFPBBニュースに「輸血は益となるより害となる可能性がある」 米デューク大研究報告という記事がしっかり載っている。この日本語記事では窒素酸化物となっているが、原文では nitric oxide と書かれているので、一酸化窒素と特定すべきだろう。この記事によると


「窒素酸化物は、酸素を運ぶ赤血球が通過しやすいように、小血管を押し広げる役割を果たす」と教授。「もし血管が開かなければ、赤血球は血管内にとどまり、体内組織に酸素が運搬されないことになる。その結果、心臓発作が起きたり、場合によっては死に至ることもある」

 また、窒素酸化物は、赤血球の柔軟性にも影響を与える可能性があるという。血液中の窒素酸化物の濃度が低下すると赤血球が硬化し、小血管内の移動が困難になるという。

NOの効果については、血管拡張作用の他にも、赤血球の柔軟性に与える影響が考えられるとのこと。結局、NOの血管拡張効果は以前から知られていたけど、まさかそんなに速やかに血液中のNO濃度が低下するとは誰も思わなかったということだろうか?

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