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2007/11/06

ソーラー飛行機「ソーラー・インパルス」の挑戦

AFPBB Newsの記事(11/6)から。ソーラー飛行機、2008年秋に試作品で有人飛行実施へ

【11月6日 AFP】太陽エネルギーのみを使うソーラー飛行機「ソーラー・インパルス(Solar Impulse)」の試作品での有人飛行が、2008年秋に行われる見通しであることが分かった。気球による初の無着陸世界一周に成功したスイス人科学者、バートランド・ピッカード(Bertrand Piccard)氏を中心とするプロジェクトグループが明らかにした。同グループは、ソーラー・インパルスでの世界一周を計画している。

 現在、その最先端技術の試験を行うため、サイズの小さい試作品がスイス北部で建造中だが、その翼長はエアバス(Airbus)A340と同程度の61メートルになるという。

 成功すれば、2009年には1.5トンのきゃしゃな機体で、夜通し36時間の連続飛行が可能となる。同機はピッカード氏が操縦する。

 ソーラー飛行機にとっての難題の1つは、ソーラーパネルから十分なエネルギーを蓄電し、夜間飛行に備えること。また、無人飛行はすでに成功しているが、搭乗する操縦士の体の大きさや体重を考慮しなければならない点も、非常に難しい課題となっている。

 このプロジェクトには7000万ユーロ(約116億円)が投じられているが、1927年にチャールズ・リンドバーグ(Charles Augustus Lindbergh)が世界で始めて達成した大西洋単独無着陸飛行に、2011年に成功することが目標だ。リンドバーグの場合と違うのは、太陽エネルギーのみを使うこと。

 さらには世界一周が予定されており、それが成功すれば、燃料不要の世界一周飛行が史上初めて達成されることになる。

 現在、世界6か国から約150人の専門家がソーラー・インパルスの建造に従事しており、空気力学、制御装置、燃料効率、材料、構造などの各分野で新しい境地を開くことが期待されている。

 完成した試作品は、機体の重さを2トンに押さえながら、580トンの超大型旅客機エアバス「A380」と同程度の翼長に、250平方メートルのソーラー・パネルを設置することになる。

太陽電池で発電したエネルギーだけで世界一周飛行をしようというのは、なかなかチャレンジングな試みだ。Solar Impulseの公式サイトには、pdfファイルだがなかなか充実した日本語による解説書が掲載されている。

世界一周を目指す飛行機のスペックを見ると、エンジンパワーは最大40kW、最高飛行高度は12000m、平均速度は70km/h。搭載する太陽電池は効率20%の単結晶シリコンで、その表面積は約250m2、蓄電池はエネルギー密度が200Wh/kgのリチウムポリマー電池で、その重量は450kgとのこと。

充電効率を稼ぐためなのか、昼間は10000m程度の高高度を飛行し、夜間は3000m程度の高度を飛行するようだ。確かに、それだけ高高度に上がれば天候の心配はなく、いつでも太陽の直射を受けられるだろうが、そのためコクピットは与圧が必要で、酸素供給や炭酸ガス除去システムも装備しているようだ。想定する外気温は+80℃から-60℃となっているので、さすがにコクピットに温度調節はあるのだろうけど、狭い空間に長時間閉じ込められるわけで、この飛行機の操縦はかなり過酷なものとなりそうだ。

ちなみに、エンジンパワーの40kWというのは、ライト兄弟の人類最初の飛行機の12馬力とほぼ同じとのこと。その出力で高度10000mまで上昇し、世界一周をしようというのだから、いかに厳しいチャレンジであるかが想像できるというものだ。

まあソーラー自動車と一緒で、このチャレンジが成功したからといって、そのまま将来このようなソーラー飛行機が実用化されることはなさそうに思うのだが、ウィキペディアによると、無人のソーラー飛行機を使用した、成層圏プラットフォームという観測や通信のための無人中継基地のようなものの開発が行われているようだ。

この分野ではNASAのヘリオスという計画があり、WIRED VISIONに説明があるが、ウィキペディアによると、2003年のフライトで太平洋に墜落したとのこと。NASAのサイトで探してみるとPast Projectsとして紹介されており、墜落事故の前にプロペラ飛行機としての到達高度の世界記録(約9700フィート)を記録したのだけれど、プロジェクトはお蔵入りとなったようだ。

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