地球に優しいカンガルーのおなら
AFPBB Newsの記事(12/6)から。地球環境に優しい「カンガルーのおなら」で、温室効果ガス排出量を抑制
一般に温室効果ガスといえば、煙突から吹き出される二酸化炭素といったイメージがある。ところが一部の国では、温室効果ガスの全排出量のうち、驚くほど高い割合を家畜の「おなら」が占めている。その1つであるオーストラリアでは、こうした温室効果ガスの排出量抑制を目指し、ウシやヒツジのおならを「カンガルー風」に改良するという試みが進められている。牛やひつじなどのゲップにメタンが含まれており、これが地球温暖化に無視できない影響を持っているという話は、このブログでも、羊のげっぷ対策で取り上げており、牛や羊の胃の中でメタンを生成するメタン菌を減らすための試みについて紹介した。今回のニュースは、カンガルーの胃の中にいるバクテリアがメタン生成を防ぐ切り札になるかもしれないというものだ。ウシやヒツジは、そのおならにメタンを含んでいるため、温室効果ガスを排出していることになる。クイーンズランド(Queensland )州政府の研究員によると、オーストラリアの温室効果ガス全排出量の14%が、家畜のおならに含まれるメタンだ。農業依存度がさらに高いニュージーランドでは5割に達する。
ところがカンガルーの胃の中には特殊なバクテリアが常在しているため、おならにメタンが含まれていない。そこでオーストラリアの研究者らは、このバクテリアをウシやヒツジに移植する方法を研究しているという。
同バクテリアは消化過程の効率を高めエネルギー吸収率が10-15%程度上がるため、えさ代を数百万ドル浮かせることも可能とされている。干ばつに悩まされているオーストラリアの農業従事者にとって15%はかなり大きな数字だ。
しかし、バクテリアを分離するのに最低3年はかかるうえ、ウシやヒツジへの移植方法も研究する必要がある。
一方、ウシやヒツジの数を減らし、カンガルーを食べるべきだと主張するる専門家もいる。この意見は論議を呼んでいるが、健康に気を使うオーストラリア人の約2割は、すでにカンガルーを食べたことがあるとみられている。ニューサウスウェールズ大学(University of New South Wales)環境研究所のPeter Ampt氏はカンガルーの肉について、「高タンパクで脂肪分が少ない。基本的に放し飼いで、自然界の餌を食べて予防注射も受けていないので、とても安全だ」と説明、優れた食料だと述べている。
オーストラリアでカンガルーがバーベキューの主役になる日が来るのは、もう少し先の話かもしれない。だが、地球温暖化に対する懸念が高まるなか、温室効果ガスの排出抑制のため、同国人があらゆる手段を試みるようになる日は近いだろう。
ところで、牛や羊からのメタンについては、ゲップが問題という認識だったのだが、今回の記事ではおならに含まれるメタンが問題と書かれている。この記事の元となったAFPの英語版の記事は、Eco-friendly kangaroo farts could help global warming: scientists。この記事では、カンガルーのおならにはメタンが含まれていないと書かれているが、牛や羊が排出するメタンについては、おならなのかゲップなのかは特定されていないようにも読める。実際には、ゲップにもおならにもメタンが含まれているという認識が正しそうだ。
さて、牛や羊がメタンを排出するのは、反芻胃の中に共生しているメタン菌のせいなのだが、このメタン菌は他の細菌が胃の中で生成する水素を原料としてメタンを作り出すようだ。牛や羊は哺乳類ウシ目の中のウシ亜目に分類される仲間だから一緒に取り扱ってもいいとして、カンガルーはそもそも哺乳類ではなく有袋類なのに、牛や羊と一緒にしていいのだろうか?
カンガルー辞典によると、カンガルーは草食性で反芻する消化器を持つようだから、牛や羊とは異なる細菌群が住んでいるとはいえ、その細菌を牛や羊の消化器に(そっくり?)移植することも可能なのかもしれない。 もっとも、「酪酸」の科学の図を見ると、羊とカンガルーでは消化器系の構造はかなり異なるように見えるけど。。
もうひとつ気になるのが、カンガルーの肉を食べるという話だが、ルーミートによると、カンガルーの肉は roomeat と呼ばれており、この記事のニュアンスよりはかなりポピュラーに食べられているようだ。オーストラリアのアボリジニは昔からルーミートを食べていたのだとか。調べてみると、地球の歩き方によると、カンガルーを直接連想しないような愛称を募集した結果、australus という名前で呼ぶことに決まったという記事も見つかった。
まあ、しかし「基本的に放し飼いで、自然界の餌を食べて予防注射も受けていないので、とても安全だ」という無邪気とも思える主張はどうだろう? かえって寄生虫とか、食中毒とか、感染症などの危険性があるように思えるし、むしろそういう危険性がないことをきちんと検査で確認しているとか言ってくれないとが安心できないと思うのだが。。
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