DNAを使って微粒子を3次元構造に配置
Reutersの記事(1/30)から。DNA does the work: Building new gold crystals
CHICAGO (Reuters) - Using DNA, the blueprint of life, U.S. researchers said they have made a three-dimensional structure from particles of gold in a development that could lead to a host of custom-designed materials.DNAの塩基対を利用して、ナノサイズの金の微粒子を3次元的に配置した構造を作ることに成功したというナノテクノロジーの最新技術の話。The technique helps solve a basic problem in nanoscience: getting impossibly small particles to assemble themselves according to a predetermined design.
"We're using inspiration from life to create new forms of matter," said Chad Mirkin, director of Northwestern University's International Institute for Nanotechnology in Evanston, Illinois. "It's a real example of man over nature."
The idea takes advantage of the molecular biology of DNA, in which one strand of DNA forms a bond with a complementary strand to make what is called a base pair.
The idea takes advantage of the molecular biology of DNA, in which one strand of DNA forms a bond with a complementary strand to make what is called a base pair.DNAを構成する塩基鎖はそれぞれ特定の塩基とペアを組む。金の微粒子に適当な長さの塩基鎖を取り付け、別の金粒子にはそれとペアを組む相補的な塩基鎖を取り付けておくと、これらを混ぜたときに、相補的な塩基鎖同士が結合するので、結果として金の微粒子同士を特定の距離で結合させることができる。この手法を3次元に拡張すると、人間が設計した通りの3次元構造を持つナノ粒子の構造物を作ることができるというアイデアのようだ。Mirkin and colleagues simply design the specific genetic code using the four building blocks of DNA -- adenine, guanine, cytosine and thymine or A, G, C and T -- and attach the gold particles to those strands.
"Think of it as taking a set of particles, modifying them with short strands of DNA and making those particles like chemically specific Velcro," Mirkin said in a telephone interview.
"I can add complementary strands of DNA that bind with one another in preconceived and highly designed ways."
ノースウエスタン大学のグループでは、実際にこの手法で実際に体心立方構造と面心立方構造を作ることができたとのこと。(参考:NewScientist.com) このニュースの元となったのは今週のNatureに掲載された異なるグループによる2つの研究。(DNA-programmable nanoparticle crystallizationと DNA-guided crystallization of colloidal nanoparticles) 同じ Nature の今週のHIGHLIGHTSの日本語要約(要ログイン)によると、
DNA中の塩基の対合によって有用な材料の結晶化を誘導できるのではないかという発想は、ナノテクノロジーにとって魅力的である。ナノ粒子に付着させた DNAが粒子の集合に影響を与えることが初めて示されてから10年以上たった今、2つのグループがこのアイデアを実行に移した。Parkたちは、金ナノ粒子に付着させたDNA分子と粒子をリンクするのに使うDNA分子を選んで、ナノ粒子を面心立方晶あるいは体心立方結晶のいずれかに自己集合させられることを実証している。とあり、10年以上前に見出された手法を基に、初めて3次元構造を作り上げたということのようだ。原理的にはこの手法を使うことで、1個1個の原子を完全に設計図どおりに配置することも可能で、これにより完全にオーダーメードの物質作りも可能となるわけだ。将来的には、フォトニクス、磁気的応用、生物医学センシング、情報およびエネルギーの蓄積などの分野での応用が考えられているようだ。
DNAの塩基対を使うことで、粒子間の距離を正確にコントロールすることができそうなことは理解できるのだが、これを3次元に広げるのはそんなに簡単なこととは思えない。各粒子はその周囲の複数の粒子(配位数分の粒子)と結合する必要があるわけで、塩基鎖をその数だけ、しかも粒子の表面の特定の位置(結合相手の粒子と正対する位置)に、それぞれ相手の粒子との距離が正確に望みどおりとなるように取り付けなくてはいけないのではないだろうか?
例えば、上のニュースに絵が載っている体心立方格子を作る場合、各粒子は8配位しているから、8本の塩基鎖を金ナノ粒子上の正しい位置にそれぞれ取り付けなくてはならないのではないだろうか? そもそも特定の長さの塩基鎖を粒子の表面に取り付けるなんてことはどうやって実現するのだろう? しかも、各金粒子に何本の塩基鎖をくっつけるのかなんてことまでコントロールできるのだろうか?
原理的にはわからんでもないけど、どうやって実現するかとなると、相当にハードル高そうに思うし、実際の実験操作となるとまるで具体的にイメージできない。でも、実際に体心立方格子と面心立方格子ができたということだから、最先端のナノテクノロジーというか、バイオテクノロジーはすごい! と驚くしかない。。
ちなみに、こうしてできた3次元構造は非常にスカスカで、ナノ粒子が全体に占める割合はわずか5%程度、DNAも5%程度ということで、90%近くが自由空間ということで、それはそれで面白い用途がありそうな構造のようだ。
なお、Natureの論文のタイトルなどでも、この技術を crystallization と呼んでいるけど、こういうのを結晶化と呼ぶのだろうか? 通常の結晶の場合、構成要素はあくまでも原子や分子だが、こいつはどんなに3次元的に規則的に配置されているとはいっても構成要素がナノ粒子だし、結晶という言葉を使うのは抵抗があるなあ。。
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