貴金属を使わないディーゼル排ガス浄化システム(ECR)
1/18の日本経済新聞のテクノロジー面で見つけた記事。
ディーゼル排ガス 貴金属使わず浄化 立命大など PMほぼ完全除去という記事なのだが、何回読んでもどんな構成となっているのかわからない。燃料電池用のセラミックスって何だろう? SOFCだったらジルコニアかな? 酸化セリウムは少なくとも主原料としては使われないと思うけど、どうだろう? 電圧をかけて分解し、酸素イオンを取り出す? うーむ??立命館大学の吉原福全教授と堀場製作所は、高価な貴金属を使わないディーゼル排ガス浄化装置を開発した。実験室段階では粒子状物質(PM)はほぼ完全に、窒素酸化物(NOx)は9割以上取り除ける。自動車やセラミックスのメーカーと組んで改良を進め、乗用車やトラック向けに3-4年後の実用化を目指す。
ディーゼル排ガスの浄化には、PMを捕まえるフィルターとNOxを分解する貴金属触媒が必要。触媒は白金など高価な貴金属を排気量1リットルにつき5-10グラムほど使っているという。白金は世界的な自動車排ガス規制の強化で需要が高まり、値上がりしている。
開発した技術は燃料電池用のセラミックスを使う。主な成分はガラスや半導体の研磨材に使う安価な酸化セリウム。フィルター状になったこのセラミックスに排ガスを通し、電圧をかけて排ガスのNOxを分解。取り出した酸素イオンでPMを浄化する。この過程でNOxとPMは無害な二酸化炭素(CO2)と窒素、水になる。(以下略)
探してみたら、NEDOのサイトで、「革新的次世代低公害車総合技術開発」中間評価分科会資料という詳細な資料がみつかった。システムの概要として「多孔質固体電解質を介してフィルタリングによるアノード極でのPMの捕集と、カソード極でのNOx吸蔵材によるNOの吸蔵を行い、固体電解質への通電によりPMとNOの同時低減を図るシステム(以下ECR:electrochemical reduction と呼ぶ)の開発」と書いてある。
メカニズムの説明によると、
・排ガスをアノード側からカソード側に透過という説明がある。固体電解質としては多孔質のYSZ(イットリア安定化ジルコニア)または多孔質のSDC(サマリウム添加セリア)を使用し、NOx吸蔵材としては、SDCまたはBaを使用したテストを行っている。ということで、この方式の全体構成や原理については、この資料の説明と模式図でどうにか理解できたけど、それを踏まえてもあの新聞記事の説明では理解が難しいと思うけど。。 せめて説明図だけでも記事中に入れて欲しいところだ。
・アノードへフィルタリングによってPMを捕集
・カソードでNOx吸蔵材によってNOxの吸蔵
・固体電解質の通電により酸素イオンが強制的にカソードからアノードに移動
・アノードでは酸素雰囲気となりPMが酸化
・還元雰囲気となるカソードではNOxが還元
・併せてアノードではHCやCOなどの未燃焼成分の酸化分解
・カソードでのNOx吸蔵を促進するために排ガス中のNOのNO2への酸化
ところで、SOFC型の燃料電池の電解質にはジルコニア系が使われるものだと思っていたけど、ここの説明にあるように、セリア系やランタンガレート系なども候補材料となっているようだ。
この排ガス浄化システムは、なかなか面白いシステムだと思うけど、ガスの透過量とか、酸素イオンの移動速度とかを考えると、現実的な大きさの装置で目標の性能を達成できるのだろうか?という疑問や、既存の触媒システムの場合は特に外部エネルギーは使わないのに、このシステムだと電気エネルギーが必要だけど、どうなんだろうなんていう疑問が出てくる。
しかし、このレポートを読むと、どうやら(いくつかの課題が無事に解決できるという仮定を置いた場合には)実用に耐えられるレベルの装置が既に視野に入っている状態のようで、意外にも(?)結構期待できる技術なのかもしれない。まあ、実際に自動車に搭載するまでにはクリアしなくてはならないハードルは相当に高そうだし、この手のレポートは多少割り引いて読む必要もありそうだけど、ともかくも注目しておく価値がありそうだ。
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