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2008/01/18

モスアイ型の無反射フィルム

化学工業日報(The Chemical Daily)のニュース(1/17)から。三菱レイヨン、モスアイ型無反射フィルムの連続製法開発

 三菱レイヨンは16日、世界で初めて連続製造が可能なモスアイ(蛾の目)型の無反射フィルム製造プロセスを開発したと発表した。財団法人・神奈川科学技術アカデミー(KAST)と共同で取り組んできたもので、同フィルムの反射率は0.1%以下。両者は同フィルムの大面積化および量産技術の開発に着手しており10年の量産化を目指す。従来の反射防止フィルムを凌駕する特性を生かし、フラットパネルディスプレイ(FPD)やモバイル機器、建材などに幅広く展開したい考え。
モスアイ型というのは聞いたことがなかった。蛾は英語で moth 、モスラの語源もここから来てそうだが、昆虫の分類などには結構大雑把で、何でもinsectとか呼んじゃう欧米人が、蝶と蛾を区別していたとは意外な感じもする。。 さて、三菱レイヨンのプレスリリースを見ると、モスアイ型の無反射フィルムは
 フィルムの表面に百ナノ(ナノは10億分の1)メートルスケールで規則的な突起配列を有する構造を持つフィルムです。この突起構造を持ったフィルムは、厚み方向の屈折率が連続的に変化するため、フィルムにあたる光を反射させることがほとんどありません。今回作製したモスアイ型無反射フィルムの反射率は 0.1%以下で、一般的な反射防止フィルムと比べ1/20以下と飛躍的な性能を示しています。
とのこと。製造方法は、神奈川科学技術アカデミー(KAST)のナノホールアレーと呼ばれる、陽極酸化により表面に規則的な細孔を形成したアルミ板を、いわば鋳型のように利用してアクリル樹脂表面に微細な突起を形成したようだ。

蛾の眼は、透けない白 VS. 本当の黒で説明されているように、眼の表面が微細で規則的な凹凸構造となっており、これが極めて反射率の小さい、従って微量の光を効率よく取り込むことができるようだ。これにより蛾は夜間でも活動ができるということらしい。

実は、表面に微細な凹凸を形成することで反射防止をしようというアイデアは、従来から知られているし、このブログでもナノ表面構造による反射防止技術として昨年紹介している。このときに調べた技術と呼び名や製造方法は異なるものの、その原理は全く同じもののようだ。今回の技術はガラスではなく樹脂を対象としていることや、恐らく製造方法が比較的シンプルで安価で大量生産が可能となることが期待されるみたいだし、我々の身近なところに広まる技術となるかもしれない。

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