アルミ水素化物を用いた水素貯蔵タンク
日本経済新聞、2/15朝刊のテクノロジー面の記事。
燃料電池用貯蔵タンク マッチ箱サイズに水素9リットルということで、折茂慎一さんという名前に覚えがあったので、このブログを検索してみたら2004年に、リチウム系水素貯蔵化合物の記事で紹介していた。今回はこの時とは異なる系ということになる。折茂さんの研究室のサイトはこちら。
東北大と日本製鋼所 携帯機器利用めざす日本製鋼所と東北大学の折茂慎一准教授、池田一貴助教らは、マッチ箱ほどの小型水素貯蔵タンクを開発した。水素をアルミ水素化物としてためる交換型のタンクで、代表的な水素吸蔵合金より水素を約四割多く取り出せる。燃料電池と組み合わせてノートパソコンなどの携帯機器に使える電池を目指す。
開発したタンクは、幅4センチ、長さ6センチ、厚さ5.5ミリのアルミ容器にアルミ水素化物の微粒子を詰め込んだ構造。このアルミ水素化物は日本製鋼と東北大が合成技術を共同開発した独自の水素吸蔵材料。セ氏80度以上で水素ガスを放出する。実験では9.3リットルの水素ガスを取り出すことに成功。代表的な水素吸蔵合金のランタン・ニッケル・水素より約43%多く出せた。アルミ水素化物をさらに改良して、携帯機器の放熱を利用できる60度で水素を出せるようにする。
アルミ水素化物は一度水素をはき出すとアルミになり元に戻せないため、実用化に当たってはタンクを取り換えて使う。早くて3年後の実用化を目指す。
東北大学のサイトで探してみたら、2007年7月のプレスリリースが見つかった。これによると、この水素吸蔵物質は AlH3 であるが、水素吸蔵に適した材料の合成技術を日本製鋼と共同で開発したということのようだ。ただし、その合成プロセスは結構複雑で、現時点ではコストがかなりかかるようだ。
水素化アルミニウムというとこんな情報やこんな情報を見ると、相当に不安定な物質という印象もあるが、上のプレスリリースを見る限り、この水素吸蔵物質の場合には、常温で数ヶ月間保管できたということで、うまく安定化させているのかもしれない。とはいえ、所詮は熱で分解して水素を放出する物質なわけだし、本質的には水素化アルミニウムなんだから、タンクが壊れたり、水に浸かったり、高温に曝されたりしたら結構危ないかもしれない。
それに加えて、使い切ったらカートリッジを交換する必要があるというのは面倒かもしれない。携帯機器用ならまだしも、自動車用の場合、冒頭に紹介した日経新聞によると
自動車用に開発が進む350気圧の高圧水素タンクと比較して約3.6倍の水素を貯蔵でき、90リットルタンク1本で650キロメートル走行できる計算になるという。ということで、使い切ったら100kgのカートリッジを交換する必要がありそうだ。それは相当に大変な力作業となりそうだな。。水素吸蔵合金は安全性などに優れるが自動車に搭載するには重すぎる欠点もある。共同開発した貯蔵材料を採用すれば90リットルタンクの重さを220キログラムから100キログラムに軽くできるとみている。
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