特別シンポジウム「21世紀、科学技術とどう向き合っていくか」
          ステートメント

 今日、科学技術が急速に発展し、いっそう高度化、複雑化が進んでいる。そうした先進の科学技術の成果は直ちに人々の生活に浸透し、日常生活での依存度も年々高まっている。このような背景の下、以下に挙げる問題が顕著になってきている。

 最近、科学的に効果が必ずしも証明されていないにもかかわらず、「科学的」に「実証されている」もしくは「効果がある」などと、あたかも科学的であることを装ったような言動や、商品が目につくことが多い。また、一部の研究の成果が極端に拡大解釈または単純化されて、悪用されることもある。このような「科学的根拠はないが、科学的であると装ったもの」は、一般に疑似科学(ニセ科学、似非科学とも言われる)と呼ばれ、しばしば社会的問題として顕在化するようになってきた。
 一方、最先端の科学技術の研究においては、新しいアィデアや試みから、その体系が確立されるまでの間、いわゆるグレーゾーンの存在は不可避である。このような発展途上の研究領域においては、科学的不確実性に対して一義的に「非科学である」と決めてしまう態度(疑似科学として扱うこと)や、専門分野の細分化に伴い、異分野の考えを排除してしまう態度は、科学技術の進歩を逆に妨げてしまう恐れがある。

 このような問題意識に基づき、本実行委員会は、以下のことを提言する。

 1. 科学者・技術者に向けて
   既に実証されている科学的事実に矛盾することついて、各分野の専門家は、的確なメッセージを発するなど、責任ある姿勢が必要である。一方、新たな分野に挑戦し、革新的な成果の創出を目指すためには、研究が本来備える多様性を認める姿勢を持つことが大切である。

 2. 学協会に向けて
   科学者・技術者のコミュニティの責任として、自律性をもちながら上記の問題とその対応策について議論する場を積極的に設けることが重要である。

 3. 産業界に向けて
   科学技術に関わる経済活動について、その社会に対する影響を鑑みながら、健全な経済活動を行うことを期待する。

 4. 行政に向けて
   科学技術に関わる統計データ等、信頼性の高い情報の取得と、その積極的な公開を進めることを期待する。

 5. 教育者に向けて
   科学技術の特性を踏まえた上で、知識偏重ではなく、生徒・学生がその素養を培うことができるように教育を行うことを期待する。

 6. メディアに向けて
   生活者が科学技術の素養を持ち、科学的な視点で物事を見ることができるように、また、科学者・技術者が上記の役割を果たすように、メディア自身も科学技術の素養を備え、その特性を踏まえた上で、多角的な視点で取材、報道することを期待する。

 7. 生活者に向けて
   日々の生活の質を向上させるために、科学技術の素養(科学技術リテラシー)を醸成することを期待する。また、科学技術の特質を踏まえた上で、疑似科学など、既に実証されている科学的事実に対する矛盾を見極める姿勢の涵養を期待する。


 これらを実現するために、生活者・政界・産業界・学会・行政など、各セクターの関係者・関係諸機関の自立的な対応を要請するとともに、今後もこうした問題についてともに広く議論を推し進めていきたい。

  平成20年1月16日
  特別シンポジウム「21世紀、科学技術とどう向き合っていくか」実行委員会
  浅島 誠(委員長)、有本 建男、池田冨士太、石原 宏、伊藤 卓(副委員長)、太田 暉人、
  唐木 英明、北島 政樹、久保 哲蔵、高橋 征生、御園生 誠、宮島 篤、村田 直樹、柳川 隆之